Twitterでカウンセラーとお話ししませんか(1)
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談では、Twitterのダイレクトメッセージを通じてカウンセラーがお話しをお聴きしています。
最前線でお話を聴いている3名のスーパーバイザーにTwitterを通じた関わりへの想いを聴きました。
お一人目は新行内カウンセリングセンター長です。
Twitterの匿名性には、善にも悪にもなる両義的な性質があると言います。そのTwitterにあえて話ができる場を作る意味について話を聴きました。
――東京メンタルヘルス・スクエアでTwitterの相談を始めた思いを教えてください。
一言で言うと、Twitterで死にたい消えたいとつぶやく人が、そのままTwitterで相談できたらいいよね、という気持ちです。
――そのまま、ですか?
嬉しいとか楽しいとかのポジティブな感情は、FacebookやInstagramで出すことができます。
消えたいとか辛いとか、リアルや他のSNSでは言葉にすることがはばかられるような、でも切実な感情があふれているSNSがTwitterであると考えています。
私は、カウンセラーは相談が必要とされる場で役に立ちたいと思っています。だからネガティブで切実な感情に一番近いSNSであるTwitterに相談の場を作りたいという思いがありました。
――Twitterは「つぶやく」場所ですから、誰も見てなくてもいいという気持ちで書いているようにも思います。
そうですね、誰も見ていなくもいいのであればスマホのメモに日記のように残しておけばいいですね。それでもあえてTwitterでつぶやく。
本当は、誰かに見て欲しい気持ちがあるのでしょうね。見て、受け止めて欲しいというか。特定の人にメッセージを送る代わりに「つぶやく」時、そういう願いがあるように思います。その願いは、『#死にたい』のようなハッシュタグを使い、検索されやすくする行動にも現れているように思います。
――つぶやいてスッキリするだけの場所ではない、ということですね。
気持ちを言葉にして出すことは大切です。
ただ実は、その後がさらに大切で、言葉に出した思いを受け止めたり、汲み取ったり、理解する人がいると、もっと良い。ホッとした気持ちになれます。
最初は勇気を出して大切な自分の気持ちや悩みを身近な誰かに言えていた人も、聴いて欲しい相手が受け止めるどころか全否定したり信じてくれなかったりすると、余計に傷ついて、誰にも言えなくなってしまいます。
――信じてもらえない!そのショックは計り知れないものがあります……
最近、学校では「SOSの出し方」教育の重要性が言われますが、もしかしたらそれ以上にSOSの受け止めを方を教育していくことが重要かもしれないと考えています。
家族や友人、先生など周りの人が子どもたちの心の声を受け止められたら望ましいのですが、受け止める余裕がないこともあるでしょう。みんな自分自身のことで大変な思いをしながら生きていますから。
――受け入れてもらえない経験を繰り返して自分の気持ちを1対1で伝えることが怖くなってしまった人には、つぶやきはちょうどよいツールなのかもしれませんね。
伝えるのは怖いけど、それでも誰かに見て欲しい。文字にさえならない心の奥のほうにある感情がツイートの後ろに見え隠れしています。
そのような感情の受け皿でありたいし、どこかで誰かがそれを受け止めないと危険だとも感じています。
——危険、ですか?
自傷他害が疑われるツイートばかりしているとTwitter社から連絡が来て、さらに続けるとアカウントが凍結されます。
行き場をなくした気持ちは膨れ上がって追いつめられてしまう。Twitterでも行き場がなくなれば、さらに孤立しててしまう。そうして追いつめられた人は視野が狭まったり判断能力が落ちたりしやすいですから、通常の状態なら無視するような誘い文句に乗って危険な目に遭ってしまうこともある。これはなんとしてでも防ぎたい!と思うのです。
——視野が狭まっている時って自分では気が付けないですから。これ以上傷つかないためにも孤立しないことは大切ですね。
私はスクールソーシャルワーカーとして自傷行為を繰り返す子どもと向き合う時、「本当は自傷を止めて欲しいけど、ダメ!って言われるだけだと、あなたの大変な心の行き場がなくなって、本当に心がつぶれちゃうよね。でも心配だから、自傷をしたくなったり、してしまった時には、言える人には言うって約束して欲しいな。言える人は誰かいる?」
と言って、周りの人の目が届く場所に、その子が居てくれるようにはたらきかけます。
Twitter上でも、私たち「こころのほっとチャット」が「大切な心の声を言える人」になりたいと願っています。
――そのような人たちがTwitter相談に繋がるには、どうしたらいいのでしょうね。
以前、辛い気持ちをツイートすると「辛いときはここに相談してください」のような誘導表示がありました。
実際には本当に辛い時にこんな表示を見ても、その時は相談する気にならないかもしれません。でもね、その広告が頭の片隅にでも残っていて、いつか「あの時見たサイトに相談しようかな」と思ってくれたら良いと思ってます。
カウンセラーであっても、本人が望まないところで心をこじ開けるようにして悩みを聴くことはできません。自らの意志で話したいと思うことが、やはりとても大切ですから。
――実際、Twitterで相談を受けて、どのようなことを感じますか?
Twitterの大きな特徴が匿名性です。この匿名性には善だ悪だと言えない両義的な特性があります。
それを怖いと感じることもありますし、ありがたいと感じることもあります。
1つ目の怖いな、というのは、相談に来られた方がどんなに危険な状態にあっても、本人を特定して救助することが難しいかもしれないということです。
不確かな繋がりの中で話を聴くことは無謀なのではないかと思うほど、怖いと感じる時もあります。その一方で、匿名性が高いからこそ、思い切って危険な状態であることを話してくれたのだろうと感じる時もあります。
2つ目のありがたいな、というのは、リアルな場では表に出せないだろう言葉を聴けることです。
弱い気持ちや本音をそっとつぶやくこともできるし、攻撃的なことや八つ当たり的なことを大声で叫ぶこともできる。ツイートする人にとってはストレス解消の手段になる一方、その叫びで傷つく人もいます。ときにはその攻撃性がカウンセラーに向けられて、チクチクと痛むようなこともありました。
――善悪どちらの働きにもなる性質ですね。そのような怖さについて、どのように接したら良いと思いますか?
私たちカウンセラー自身がTwitterの特性、どのように使われているかを学んで、ときには実際に使ってみて、慣れていくことが大切だと思います。
このツールの特性を理解すれば、必要以上に恐れることも痛むこともなくTwitterを通して話が聴けますから。
――これからTwitterで相談しようとしている人に、どのようなことを伝えたいですか?
あまり構えずに、「少し話そう」くらいの気持ちでDMを送ってほしいです。
「相談」って、自分の弱さや出来ていないことを告白しなければいけないような気がして、身構えてしまう人もいるのではないかと思います。大袈裟に考えないで、いつもはつぶやくだけの気持ちを、今日はカウンセラーにも話してみようかな、と思ってもらえたら嬉しいです。
広報スタッフA
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