~「バランスの良い考え方」で快適に生きる~
~「バランスの良い考え方」で快適に生きる~
2024年7月19日(金) 玉井仁先生の講座より
毎日の暮らしの中で「今日は良い日だったな」と思う日もあれば「今日はあんまり良い事がなかったな」と感じる。
そんなことはありませんか?
おそらく誰にでもそのような「良い時」と「悪い時」はあるのではないでしょうか。
感情の波や起伏が起こるとストレスが溜まり疲れを感じやすくなります。
「じゃあ、どうすれば良いのかな?」と思った方に、ぜひ知っていただきたい方法があります。
調子が良くない時もできるだけ穏やかな気持ちで過ごしたいものですよね。
そこで、今回は【「バランスの良い考え方」で快適に生きる~認知行動療法(CBT)のエッセンスをライフスタイルに取り入れよう~】というテーマで
メンタルヘルスの専門家であり、これまで数々の書籍を執筆している玉井仁先生にお話しをしていただきました。
ある事象が起こった時に、その受け取り方やものの見かたを「認知」と言います。
その「認知」に働きかけてストレスなど心の負担を軽くしていく方法が「認知行動療法」です。
うつ病など精神疾患の治療法としても知られていますが、それだけではなく日常の心の問題への対処法としても効果的だとされています。
生活の中で感じるストレスやイライラを「認知行動療法」を取り入れることによって軽減することができると良いですね。
それでは、早速、その具体的な方法についてこれからご紹介していきます。
「バランスの良い考え方」は時には難しいもの。
人は「良い時」と「悪い時」があります。「悪い時」はどうしてもバランスが偏ってしまいます。
その気持ちが揺れる様子を、玉井先生は「やじろべえ」のようだと例えています。
傾いたり揺れたりしながらも、一番安定するバランスを見つけるということだそうです。
そして、その「バランス」は人によってそれぞれ違います。
ある事象が起きた時にイライラする人とそうでもない人がいるように、私たちの感じ方やその時の感情はバラバラです。
だからこそ、自分自身がどうなるとバランスを崩しやすくなるのかを理解しておくことが大切なのですね。
「何とかしたいこと」に気がつくのが大事
今、自分の調子がどんな状況なのかを考えた時、「少し不調かも・・」と気がついたとしても「忙しいから・・」などの理由でついスルーしてしまいがちです。
それは、「まだ大丈夫!」と信じたい気持ち、そしてそう思い込んでしまう心理が働いてしまうからです。
そうするうちにだんだんと体調が悪くなってきて、時には眠れないなどの身体的な不調が現れることがあります。
こうなると大丈夫ではないですね。できればそうなる前に何かしらの手立てを講じたいものです。
そのためにまず、思考の固さについて考えてみましょう。
思考の固さについて~柔らかな考え方~
「考え方」には固さがあります。その固さがどんな固さなのかということが重要です。
例えば何かに対して「こうあるべき」と考えることや白黒はっきりつけたいという思い。これが「考え方のクセ」にあたります。
そして、このような場合は「考え方」がカチコチの固い状態だといえます。
反対に、「考え方」が柔らかすぎても色々と支障が生じます。
つまり、その中間の適度な柔軟さでいることがちょうど良いとされます。
例えば、会社で仕事をしていて「今日は疲れたなあ・・」と感じた時、どうしますか?
「終わるまで絶対に帰らない!」あるいは「もうやりたくないから、会社を辞めてしまおう!」と考える。
どちらも極端ですね。
こんな時に「今日は疲れたから早く帰って休もう。また明日やればいいよ」と思う。
これが、ちょうど良い柔らかな考え方だと玉井先生はお話しくださいました。
ついつい頑張ってしまう人も時には頑張りすぎない事が大切です。
極端に偏らないというこの考え方、これなら私たちも取り入れやすいのではないでしょうか。
気持ちが揺れた後に回復をする
例えば、すごく嫌な事を言われた時、心の中では「イラっ」としてもそれをそのまま言葉にしないことが皆さんもありませんか。
もちろん、人間関係を壊さないためには大切なことですが、その分ストレスを感じたりします。
嫌な事を言われて嫌な気分になること自体は自然なことです。大事なのはそこから回復できるかどうかなのです。
つまり「気持ちが揺れる」⇒「回復する」この二つがセットではじめて健康といえるのです。
「基本認知モデル」を使って状況の整理や自己理解をする
私たちの周りで起きる様々な刺激や出来事、入って来る情報について認知行動療法では「思考」「感情」「行動」「身体」の4つの枠組みで見ます。
ここで参加者の方から次のような質問がありました。
【質問】「認知行動療法」では「行動」を使う場合、具体的にはどのような事をしますか?
この質問について玉井先生は次のように回答してくださいました。
例えば、職場で「私はAさんから嫌われているのではないか?」と思った時のケースで考えてみます。
そこで、「Aさんに本当に嫌われているのかどうかを検証するための行動をする」とします。
その行動として⇒「挨拶をする」と決める⇒実際にAさんに挨拶をしてみる。
返事がAさんから返ってくる⇒気分が変わる⇒「あの時はたまたまこの人、機嫌が悪かっただけで私は嫌われていなかったのだな」と思う。
いかがでしょうか? このようにちょっとした行動が時に気分を大きく変えるものとなるのです。
こういったことは、おそらく皆さん何かしら普段から行っているのかもしれませんね。
そして、この時「自分の状況を少し引いて見る」ということが重要だと玉井先生からのアドバイスがありました。
つまり自分自身のことですが、すこし引いたところから俯瞰してその状況を見てみることが大切なのですね。
「認知行動療法」では「セルフモニタリング」と呼びますが、「引いて見るということ」を練習して少しずつ身につけていけると良いのではと思いました。
不調を乗り越えたいときの方法について
「不調」は誰にでもあるものです。
では、「不調」の時はどのように対処をすればよいのでしょうか。
ここで玉井先生がおすすめの3つの方法をご紹介します。
「7人作戦」⇒自分以外の7人に置き換えてみる。家族や友人、あるいは歴史上の人物など7人を思い浮かべて、「今、この状況でこの7人ならどう思うのか?」と考えてみる。
「最悪な状況と比較する」⇒今よりもっと最悪な状況を想像して、「うん、それに比べると今のほうがまだ良いな」と考える。
「ツッコミを入れる」⇒苦しい思いをしている時に「また、自分で自分を追い込んでいるね~」と自分自身にツッコミを入れる。この時に大事なのはユーモア。
ちなみに玉井先生の一番のお気に入りは「ツッコミを入れる」ことだそうです。
よくご自身に入れているそうですので、どのようにツッコむのか機会があればぜひ聞いてみたいですね。
さて、ここまでいかがでしたでしょうか。
今回の玉井先生のお話しの中に「この方法があったのか!」や「こう考えると良いのか・・」など様々な気づきがあったのではないでしょうか。
こうあるべきとする「べき思考」や、物事をはっきりさせたい「白黒思考」なども「考え方のクセ」です。
その「クセ」を客観的に分析してみるとバランスを崩しやすい原因であることがわかります。
ただ、そのような「クセ」があったとしても「練習をするとその偏ったクセが治せるようになる。」とのお話しがありました。
肩の力を抜いて、自分がラクにいられる方法を少しずつ試していく。
続けるうちにだんだんと変わることができるのだ・・と思うと気持ちがス~ッと軽くなりますね。
もし、どうしてもその方法が見つからない場合は、誰かに話しを聴いてもらうのも良いかもしれません。
その結果として、気持ちがラクになって回復した時は、その前後の事象をチェックすることも大切です。
「こころ」と「身体」、両方の回復を意識しながら自分自身にしっくり合う方法を見つけたいですね。
私もできることからゆっくり無理のないように始めてみようと思います。
最後となりましたが、皆さんもこれを機に、今一度ご自身の「考え方のクセ」について考えてみませんか。
そして、少しでも気持ちがラクにいられる、ちょうど良いバランスを探してみてはいかがでしょうか。
だんだんと本格的な秋が近づいてまいりました。芸術の秋、運動の秋、食欲の秋・・・。今年はどのような秋にしますか?
空高く、爽やかな風が吹くこの季節、どうぞ心身ともに健やかにお過ごしください。
事務局 Yoshiko T.
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【大切な人の命を周りの人々で守る】 高橋聡美先生講演
センシティブだけど重要な話題、「命を守ること」。
コロナ禍も3年目となり、変わらず不安定な世界が続いている今、自殺予防について一緒に考えてみませんか?
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今回は、【大切な人の命を周りの人々で守る ~地域で取り組む自殺予防・ゲートキーパー入門~】というテーマで、一般社団法人高橋聡美研究室代表の高橋聡美先生に講演いただきました。
高橋先生はご自身が機能不全家庭で育ったことから精神看護の道に進まれたそうですが、「私の生育環境も伝えなければ知られないように、心の傷は言わないと見えない」とおっしゃっており、伝えること/相談することの重要性をより一層感じることができました。
高橋先生のお話から私なりに理解した命を守る方法をまとめてみました。
【自殺者数の推移と対策の考え方】
今までの傾向によると男性の自殺者数が女性の約2.0倍であり、特に多かった男性中高年を中心とした対策が取られてきたようです。しかし、その分対策が後回しにされていた女性や子どもの自殺者数がコロナ禍で増加してしまったのが現状とのことでした。
「現状がわかっても、じゃあどうしたらいいの?」となったときに、高橋先生は交通事故死者数に関して説明してくださいました。
交通戦争と呼ばれる時代から現在までの50年間に、犠牲者の数は約1/6に減らせたようです。
その理由は、様々な環境や制度が整ったから。
ガードレールや歩道の整備といったハード面や、交通安全教室の実施といったソフト面、さらには法律の整備等の様々な観点から対策を実施してきたことが、実を結んできているようです。
これは同じことが自殺対策にも言えて、これといった特効薬がなくても、原因ごとに対処はできるとおっしゃっていました。
たしかに、「しにたい」と思う背景にはそれを思うだけの原因があって、逆に考えれば、その原因に対処できれば止められるかもしれなくて、「大切な人を守ろう」という大きな目標から実際の行動指針まで明確になり、とても勉強になりました。
そして、もう一つ大切な考え方が「自殺を選ぶ前段階で止めること」のようです。生きづらさを抱えた状態がストレスとなり、ストレスが積み重なって心の病が発生し、そして自死を選んでしまう。生きづらさの段階であれば、誰かが傾聴することで次の段階まで進むのを食い止められるかもしれない。そんなお話から、生きづらさを感じる状態で対処することの重要性を感じました。
【ゲートキーパーとは】
厚生労働省の定義では「自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応を図ることができる人」とされているようです。しかし、高橋先生は「悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人」とおっしゃっていました。
厚労省の定義だと、自分が精神医学の専門知識等がないとかなり難しそうと思ってしまいましたが、高橋先生の定義だと、身近な人間関係/交友関係のなかでちょっと会話するだけでも意味がありそうと思えて、行動のハードルを下がったような気がしました。
【SOSを受け止める(受容傾聴)】
高橋先生は学生に講演をする際には、「抱えている生きづらさに気づくこと」と「悩み事・困りごとレベルで相談すること」の大切さを話されているそうです。私が学生だった頃を振り返ってみると、何かもやもやすることがあっても、周りの目が気になってなかなか相談するのが難しかったことを思い出しました。高橋先生は様々な学校で講演されているということで、生徒さんたちが気軽に相談できるような価値観が広がっていくといいなと思いました。
一方で、受け止める側の大人としては、「受容傾聴」の姿勢が重要とのことです。「受容傾聴」とは、文字通り「まるっと受けとめて、詳しく聴く」こと。
例えば、「仕事が覚えられない」というお話には、「仕事が覚えられないんだね。例えばどんなのが?」と返すことで、相手の情景が見られるとおっしゃっていました。
たしかに、せっかく話したのに分かってもらえなかったとなってしまったら、もう話したくなくなっちゃいますよね。解決策も重要だけど、まずは真っ直ぐに話を聞いてくれる人がいることが大切だなと感じました。
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最後に、今回の講義を受けて感じたことを書こうと思います。
高橋先生は「折れない心をつくるのは難しいから、避けられるストレスは避けよう」とおっしゃっていました。
折れない心があったらどんなに素敵だろうと私も思います。けれど、雨には傘、矛には盾があるように、ストレスから自分を守るすべがあるのなら、積極的につかっていきたいですね。
そして、身近にいる大切なひとがつらそうなときにはそっと傘をさせる、そんな人になりたいと思いました。
今回のセミナーの詳細は下記の本に記載がございますので、もしよろしければご一読ください。
2022/07/28
事務局 sun
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第1部 12:00~16:00(受付は~15:00)/第2部 17:00~21:00(受付は~20:00)
※毎日実施。毎月最終土曜日は、12:00 ~ 翌21:00まで深夜早朝も受け付けています。
■お話しパートナー(50分3,000円の傾聴カウンセリング)
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■こころのほっとライン(20分間の無料電話相談。実施日時は下記URLに記載)
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前野マドカ先生に【ウェルビーイング・パートナーシップ】にご登壇いただきました
「幸せ」って何だろう。
きっと多くの人は「幸せになりたい/幸せでいたい」と願うけれど、「じゃあ具体的にどうすれば?」となると難しいですね。
そんな漠然とした「幸せ」の概念を研究するのが、「幸福学」という学問になります。
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今回は、【ウェルビーイング・パートナーシップ ~ウェルビーイングな関係性の作り方~】というテーマで、慶応義塾大学研究員/EVOL株式会社CEOである前野マドカ先生に講義いただきました。
マドカ先生はご主人である前野隆司先生とともにに「幸福学」を探求されており、「常日頃から幸せについて考え、実践している私たちだからこそ、幸せにならないとおかしいと思うくらい。
けれど、それは特別なことではなくて、どなたでも実現できることです」と幸せそうに自己紹介される姿を拝見し、「幸福学」初心者の私はとても引き込まれました。
マドカ先生のお話から私なりに理解した幸福学、ウェルビーイングをまとめてみました。
【そもそも幸せって?】
日本語で言う「幸せ」は、英語での「Well-bring(良好な状態)」と「Happiness(感情としての幸せ)」の両方を足し合わせた状態のようです。
日常生活で「幸せだなぁ」と感じるときは「Happiness」で表現したくなるけど、幸せを感じられる状態、つまり「Well-being」な状態があるからこそなのかなと考えると、「幸せ」という単語の奥深さを感じました。
そして、Well-beingは心を整えることから始まり、マドカ先生は心(感情)を構成する因子として人間関係を重視しているとおっしゃいます。
「誰かと関わるうえでその人の心を変えることができるのはその人自身しかいない。だけど"私"の心は変えられるし、人間は環境に影響される生き物であるから、私の行動次第で周りの方々にも良い状態を生み出せる。」本当に、その通りだと思いました。何かが思い通りに進まなかったとき、「どうして〇〇してくれないの」と不満に感じてしまいそうになったら、この言葉を思いだしてみようと思いました。
幸せそうな人のそばにいると自然と幸せな気持ちになれる。
マドカ先生は終始笑顔でお話されていて、その笑顔に接していたら周りの方々も笑顔になれるんだろうなと感じました。
笑顔は自分のためだけじゃなくて、周りの人にも伝搬するのだから、私も先生のように穏やかな笑顔に満ちた人でいられるように心掛けたいです😊
【幸せになるには?】
幸福学の基本的な考え方として、次の4因子のバランスが良い人は幸福度が高いという結論に達したそうです。
①やってみよう(自己実現と成長) :目標をもつ
②ありがとう(つながりと感謝) :周囲との関係性を大切にする
③なんとかなる(前向きと楽観) :前向きにいる
④ありのままに(独立と自分らしさ):自分らしくいる
正直に言うと、私にとっては4つめの「ありのままに」が難しいと感じてしまいました。誰かと比較せず、どんなときも「私は私」と思えたら。。なかなか難しいですよね。きっと、1つめの「やってみよう」で少しずつ自信をつけて、2つめの「ありがとう」で周りのみんなに感謝しながら、3つめの「なんとかなる」の考え方を身につければ、そのままの自分を愛せるようになるのかなと思いました♡♡
【関係性を築くうえで大切なこと】
上司や部下、同僚、取引先のお客様などの職場での人間関係、親子や夫婦、兄弟姉妹などの家庭での関係性。人は様々なコミュニティに属しているからこそ、本当に多様な関係性がありますよね。しかし、それらはどんな関係であっても、お相手は「何かを一緒に作るパートナー」という意識で接することが大切だそうです。
パートナーのラベル(肩書)に囚われず、誰と接するうえでも謙虚に向かいあう。上司もお客様も配偶者も、広い意味ではみんな平等の立場の「何かを一緒に作るパートナー」と考える。
そう思うと、お互いが「一緒に頑張ろうね!!」と歩み寄って、物事を協力しながら進められそうですね。
【パートナーシップの3つの秘訣】
パートナーシップには、次の3つの秘訣があるようです。
① 信頼・尊敬:相手はもちろんだが、まずは自分自身も褒めてみる
② 成長 :小さな成長に目を向けて、出来なかったことよりも出来たことを見つける
③ ユーモア :笑いは新しい発想をもたらすため、日常にユーモアをプラスする
1つめの「信頼・尊敬」や2つめの「成長」はなんとなくわかるけど、3つめの「ユーモア」は驚きでした。たしかに、笑いは場に和やかさをもたらすし、空気も軽くなって、より一層会話しやすくなりますよね。日頃からユーモアを意識するだけで日常がもっと楽しくなりそうだし、ぜひ実践したいなと思いました😊
【伝え方のポイント】
どんな事実や言葉でも必ず多面性があり、つまり考え方を変えればポジティブに変換できるとおっしゃっていました。
例えば、「~がだめ」は「~するともっといいね」、「~しないで」は「~しよう」と言い換えれば、否定的な言葉が肯定形になり、言われた側も受け止めやすくなりますよね。何かをしないでほしいとき、相手を傷つけずに伝える配慮として、とても勉強になりました。
また、もう一つのポイントは「Weメッセージ」を使うことのようです。「Weメッセージ」とは、「なんであなたは~していないの?」を「私たち~してなかったね」のように、主語を「私たち」として伝えることです。相手だけを責めないところが素敵な会話術ですよね。【関係性を築くうえで大切なこと】で書いた「相手はパートナーである」という意識とも繋がっているのかなと考えました。
そして、もう一つ覚えておきたいのは「人それぞれ思考の癖があるので、相手に悪意はないのに傷つくこともある」ということです。マドカ先生は「カチン」とくることを言われたとしても、すぐに怒ることはせず、ひと呼吸おいてから「ねえ、なんで今そういったの?」って聞くことにしているそうです。傷ついたり、怒りたくなったりしても、もしかしたら受け取り方の問題で、相手は全く意図していなかったかもしれない。今後、もし「イラッ」っとしてしまったら、勇気をもって聞いてみようと思いました。
*====================================*
最後に、講義を受けて感じたことを書こうと思います。
マドカ先生は、「日本人は謙虚だから自分がまず幸せになることを躊躇う人も多いけど、自分が良い状態であれば周りにも影響する」とお話をされていました。
確かに、世の中に存在しうる「幸せ」の量に上限はないし、誰かの幸せと私の幸せはトレードオフでもないはずです。
それならば、まずは自分が「幸せ」と思える状態をつくることに注力してみてもよいのかもしれないですね。
ふと、大切な誰かと「私はこんなことが幸せだけど、あなたは?」と会話したくなる、そんな講義でした。
この記事を読んでくださったあなたが思う「私にとっての幸せとは/こんなことが幸せです」があれば、ぜひ以下から投稿いただけると嬉しいです。
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2022年06月26日
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7月10日、武藤清榮がウェビナー『大切な人と「こころの対話」を取り戻すコミュニケーション法』に登壇しました
メンタルヘルスとコミュニケーションの専門家、NPO法人 東京メンタル・スクエア (弊団体)理事長 武藤清榮『大切な人と「こころの対話」を取り戻すコミュニケーション法』についてを4つの項目に分けてお話しさせてだきました。
1.大切な人とは
- 昔はそうだった
- 今はそうでもない
- 賞味期限は?
「大切な人とは誰なんだろう?」
武藤は、大切な人とは、一般的には好きな人や、経済的に支えてくれる人、色々な出来事を共有する人、一緒に旅行や食事を楽しんでくれる人などなど、自分の生きがいややりがいを作ってくれる人の事を指すと説明しました。
その大切な人へも、今は大切だけど、昔はそうでもない、またその逆。あるいは、本当の気持ちを隠して大切だと思わせぶりな態度をとっている人もいるでしょう。
「大切な人」に賞味期限はあるのでしょうか?
もちろん、できれば大切な人とは一生寄り添いたい、という気持ちは多くの方々にあるかと思います。
武藤は、一つ事例を上げました。
奥さんをとても大切だと思っていた旦那さんがいらっしゃいました。その旦那さんは、ある時浮気をしてしまいました。浮気をされた奥さんは、裏切られ、そして大切に思っていた旦那さんが憎くなってしまったそうです。そして、奥さんは旦那さんだけでなく、全ての男性を嫌い憎むようになり、武藤のもとへカウンセリングにいらっしゃったそうです。
武藤は、いつもカウンセリングのゴールを決めてお話をしているそうですが、奥さんは「旦那さんを許せるようになること」を望んでいた様です。しかし、なぜ浮気をしたのかと言う思いや、なぜ、この人と生きなけれなならないのか、でもこの人が好きと言う葛藤からどうしても抜け出すことが出来なかったそうです。
「大切な人」と言うことは簡単ですが、現実にはその関係性や賞味期限は一筋縄では行かない場合が多いのだと感じました。
2.心の対話って何?
- 心を言葉や行動にする
- ここで課題になるのが「無意識」
大切な人とのこころの対話をするには、まず心の領域を知ることが大切です。
心は下記の8つの領域に分かれているそうです。
- 感情
- 思考
- 記憶
- 意欲
- 意識
- 自我意識(自分は役に立っている、存在意義、自分の居場所があるなど)
- 知覚(見たり、効いたり、触ったりなど)
- 知能
「こころの対話」とは、主に「感情」、「思考」、「意欲」、「自我意識」について対話ができるかどうかを指します。
心の8つの領域を言葉にしたほうが、他の人には伝わりやすいのですが、本音を話すのを我慢してしまったり、上手く言葉に出来ないことがあります。それは、過去にため込んだ攻撃的な気持ちやネガティブな気持ちが無意識にコミュニケーションの邪魔をしてしまうからなのだそうです。
武藤自身も、過去の抑圧された思いが無意識に影響し、不安障害の一つ自己臭症を患っていた時があったそうです。自己臭症は自分の匂いが過度に気になり日常生活に支障をきたすようになる障害です。何度も、親や友人に自分が匂っていないか確認をし、匂っていないと言われても信じられず大変な思いをされたそうです。
数十年前に分かったそうなのですが、原因は、小学生の頃のトイレの失敗だったのです。失敗後に、すぐさま家に帰ったそうなのですが、家に到着するまでの15分間のネガティブな心理状態や葛藤が不安障害の原因を作ってしまったそうです。その後、学校でも自分の匂いが気になったり、友達が自分を避けるようになった感じがしたそうです。そして、次第に学校に行きにくくなってしまったそうですが、同じクラスの友人が自分と同じ失敗してしまったことにより、しょうがないよという気持ちが芽生え、友人を肯定し自分自身の失敗も肯定することが出来たそうです。
3.千寿子さんは大切な人?
- 過去の体験が今の人生にも影響
- まだ和解ができていない
しかし、同じクラスの隣の席の千寿子さんには、あの時、自分がトイレの失敗をしたことをいつまでも伝えることが出来ず、まだ和解出来ていない状態いないため、千寿子さんを今でも気にしたり、苦手意識をもっていたりしてしまうそうです。
この過去の出来事が、無意識に現在まで影響しているため、特定のシチュエーションや言葉に過度に敏感になってしまう時があるのだそうです。
実は、武藤はこのエピソードを奥さんには話されていないそうですが、奥さんにこの話をしても「しょうがないわね。」と受け止めてくれるはず、と話していました。
4.「こころの対話」を取り戻す方法 ‐パンスト‐
- パンクチュエーション(句読点の打ち方や間の取り方)
- ストローク(相手への尊重と素直な気持ちや期待(理解しようとする態度はプラスのストローク))
「こころの対話」を取り戻すためには、失敗や秘密等の心のカミングアウトや共有が必要です。しかし、話したくなければ無理に話す必要はないのですが、そのことで悩むなら言ったほうが良い時もあると武藤は指摘します。
また、話を受け止める側も、褒める、励ます、慰める等の言葉によるストロークや、うなずく、微笑む、なでる、さするなどの非言語によるストロークなどの、プラスのストロークを使用したコミュニケーションをできるだけとる事により、話し手が安心して話せる環境を作るこが大切だそうです。
言葉を区切る場所を変えてみたり、相手が考えたり、目が動いている時は聞き手は待つ等の間の取り方や、自分が話したら相手が話すのを待つなどストロークやパンクチュエーションを調整することも必要となってきます。
最後に、こころの対話を取り戻すコミュニケーション法をまとめると、心とは何かを知り、心の中のネガティブな部分をカミングアウトする勇気を持ち、話し合いをする際は肯定的なストロークやパンクチュエーションを上手く使うこと、話し合いが上手くいかなくても大丈夫と思えるポジティブな気持ちでいること、を心がけると良いコミュニケーションがとれるようになるそうです。
自分自身も何かをカミングアウトする時や、誰かのカミングアウトを受け止める状況になった時は、コミュニケーションのポイントを意識して対応できるようになれれば良いなと思いました。
2021年8月8日
事務局 AJ
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5月23日、前野教授にウェビナー『幸福学入門』にご登壇いただきました
幸せとは何か? 人は何をもって幸せなのか?
誰でも一度は幸せの定義(基準)を考えたことがあるかと思います。幸せとは一体何かを知るべく、幸福学の第一人者、慶應義塾大学 前野隆司教授に5月23日開催「幸福学入門」のウェビナー講師をお願いしました。
始めに、前野教授は「幸せ」と「happiness」の違いにについてお話して下さいました。一見、「幸せ=happiness」のようにとらえてしまいそうですが、「happiness」は感情としての短期的な幸せであり、「幸せ」はもちろん、心の状態を表現する際にも使いますが、happinessを含めたもっと広い範囲、そして長いスパンでの「幸福」を意味するそうです。さらに、幸福に健康や福祉が加わりWell-being(良好な状態)となります。幸福学は、予防医学であり、ポジティブな心理学を研究し、幸せな人がさらに幸せになるための学問なのです。
ここで1つ、ウェビナー中にお話のあった幸せな人がさらに幸せになるメリットの具体例を挙げたいと思います。
とある研究によると、幸せな社員は不幸せな社員より創造性が3倍高く、生産性が1.3倍高くなるそうです。幸せな人がさらに幸せになることで、創造性、生産性が向上し、日本社会全体、また世界全体の幸せに繋がっていく可能性を秘めているのです。幸せは産業の発展や人類の繁栄にも関係しているので、幸福学はこれからもどんどん研究されるべき学問だと思いました。
現在では批判は少なくなったそうですが、前野教授の"幸せな人がもっと幸せになる"研究が批判を受けることもあったようです。しかし、現在はウェルビーイングという言葉や考えが世間に広まってきており、幸福学はますます注目、研究されていく学問になっていくことと思います。
2021年のWorld Happiness Report では、日本の幸福度は56位でした。この順位は先進国の中で最下位です。このレポートはアンケート形式での回答をもとに作成されるそうなのですが、回答には文化的背景が反映されてしまっており、個人主義(主に欧米圏)の国の人々は、比較的高い数字に丸を付け、集団主義(主に東アジア圏)の人々は、真ん中くらいの数字に丸を付けるのだそうです。
さて、日本のアンケートの結果はというと、中間の数字と高い数字のふた山になります。近代の日本の欧米文化を取り入れた教育の歴史などが関わり、個人主義と集団主義の考え方の人々がミックスされていると考えられるとのことでした。そのため、日本の幸福度はアジアの国々の中では高く、欧米の国々と比べると低くなっています。先進国は欧米の国々が占める割合が高いため、どうしても順位が下がってしまいます。アンケートの取り方によっても結果が大きく変化するため、レポートだけで日本の幸福度の順位を判断するのは少し難しいようです。
私もなぜ日本は先進国中で最下位なのか疑問に思っていました。しかし、そこには文化的背景や、主観を基準としたアンケート手法などが関係していることを知り、必ずしもWorld Happiness Reportの結果がその国の幸福度の全てでは無いと言うことが分かり一安心しました。
アンケートは、良い意味、悪い意味を含めて国民性が反映されてしまうので、あまり依存しすぎないほうが良いと、前野教授はお話されていました。
しかし、同じ国の中で幸福度を調べると、幸福度が高い人の方が長寿であると言うことが分かっており、属性をそろえて比較していくと、その国の人々の幸福度が分かってくるのだそうです。
幸福学は、予防医学より遅れて研究されるようになりましたが、近年、幸せと健康の相関関係が続々と解き明かされてきているようです。人は幸せな状態だと、体の良好なコンディションを保つことが可能となり、長寿にも繋がっていきます。
90歳~100歳になると、自己中心性が減少する、寛容性が高まる、死への恐怖が低くなる、空間や時間を超越する(例えば、多くの人が認知機能が低下し空間や時間などの概念に囚われにくくなる)などの傾向が出てくるため、さらに幸せな気持ちで過ごすことができるのだそうです。このお話を聞いて長生きするのが楽しみになりました。
前野教授が2012年に書かれた書籍「幸せのメカニズム」で発表された、幸福学の基礎は下記の4つの因子から成ります。
- やってみよう因子:頑張れることや目標があったり、また、自分の強みを知り、主体的に頑張っている人は幸せです。
- ありがとう因子:利他性、思いやり、人との繋がりやコミュニケーションは幸せなを生みだします。
- 何とかなる因子:前向きでチャレンジ精神をもって楽観的な人は幸せです。気持ちが楽観的になると、幸福度が上がり生産性や創造性も上がっていくのです。
- ありのままに因子:自分軸、本来感、自分自身を知っているということは幸せです。
今は4つの因子の全てを満たしていなくても、これからの未来を楽しみに、そして、自分が楽しめる範囲で行動していくことによって、どんどん幸福度が上がっていくのだとお話されていました。
お金やモノ、他人と比べられることによって得る「地位財」型の幸せは長続きせず、お金ではなく、趣味や家族、目標などの、幸せと健康な体と良い環境(ウェルビーイング)が揃っている「非地位財」であることが長続きする幸せがのキーとなるそうです。
また、幸福学の4つの因子に加えて、未発表の新たな幸福学の基礎として、さらに詳細な分類も発表してくださいました。
今回の前野教授のお話を聞いて、長続きする幸せとは物質的なモノやコトから得られるものではなく、自分自身を知ることだったり、他者との関係性やコミュニケーションからも得られるものであること。主体的であるか受動的であるかなどのバランスも大切になってくるのだと感じました。
幸せの形は人それぞれですが、人類全体の幸福度を上げることが私たちの明るい未来に繋がって行くのではないかと思います。
2021年6月2日
事務局 AJ
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野波ツナさん、「大人の発達障害講座・カサンドラの支援と脱却」のウェビナーに参加しました
※新型コロナウィルス対策の為にライブ参加は人数を絞って開催しました。
最近、耳にすることや目にする事が多くなった「カサンドラ症候群」という言葉。私はいったいどのような症状・状態なのかほとんど知りませんでした。今回、カサンドラの理解や知識を深めたいと思いウェビナーに参加いたしました。
野波ツナ先生は夫・アキラさんが「ASD」とは知らず交際、結婚されました。
長い結婚生活の中、夫の発言や行動に疑問を持ち、理解できず心身共に苦しみ続けたツナ先生。調べていくうちに、実は、アキラさんはASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)だという一つの答えにたどり着いたそうです。。そして、アキラさんとの関係に悩み苦しむツナ先生は、じわじわとカサンドラの状態に陥っていきます。
カサンドラは、「ASD特性を持つ人」との生活の中で疲弊し、心身に異状をきたしている状態のことです。(例えば、抑うつ状態、睡眠障害、生理不順、甲状腺の病気、線維筋痛症、ガンなど)
カサンドラの原因になるパートナーのASD特性としては、下記の項目などがあります。
- 共感性が持てない
- 自他の境界が無い
- 自己完結的に動く
- 強いこだわり
- 言外の意味を推察できない
ASDのパートナーを持つ全ての人がカサンドラになるわけではなく、カサンドラになる原因は100人100通り、また一人ひとりオーダーメイドの解決方法が必要とツナ先生はお話されました。
カサンドラから回復するためには、まず、自分の置かれている状態に気づき、心身をゆっくり休めます。心身が十分に回復したら、パートナーの特性や発達障害の正しい知識を知り、パートナーの行動の心理を理解することが大切なのだそうです。
心身の回復の方法も、例えば自分の苦しさの原因などを言語化したり、同じ境遇の人との触れ合いや、カウンセラーを利用する、パートナーと物理的な距離とるなど、様々な選択の中から自分にあった対処方法を見つけることがカギになるのだと思いました。
最後に、ツナ先生は「あなたの人生はあなたのもの、あなたを幸せにできるのはあなたなんです」というメッセージを伝えてくださいました。自分の苦しさに気づけるのも自分、そして自分を愛し幸せにできるのも自分。
まずは、自分自身を労り愛する。それからパートナーの心理を理解して行くことがカサンドラの回復がに繋がっていくのだと思いました。
今回のウェビナーを通して、カサンドラについての理解が少しでも深まり、一人でも多くの苦しんでいる方々を社会でサポートできるようになればと願うばかりです。
ウェビナー内で参加者の皆様から、お答えしきれないほどの沢山のご質問を頂きました。
お答えできなかったご質問に野波ツナ先生がご回答くださいましたので、下記にQ&Aを掲載いたします。
※いただいた質問は文章を一部省略等しています。また、類似した質問はまとめてお答えいたしました。ご了承ください。
< ASD特性のあるパートナーに関する質問>
Q.(複数質問)本人にASDと気付いてもらいたい。その方法やキッカケについて
A. 何度も言っていますが、重要なので何度でも言いますね。気付く時期やキッカケは、本人次第です。本人が気付いて納得する「時」を待たねばなりません。「時」というのは、「ASDであることを認めることで本人がラクになる時」です。
具体的には、ASD特性が原因でトラブルを起こして本人がひどく落ち込んだ時。こういう時に「あなたのせいじゃなく、あなたのASD特性のせいなのかもよ」と【冷静に&論理的に】話をすると受け入れる可能性が高いです。【受け入れることが本人の利益になる】のがポイントです。
ただ、ASDであることを本人が認めても、それで状態が改善するということではありません。
ASDはもともとの【素質】のようなものであって、病気ではないので治療できるものではなく、周囲(妻や家族など)との関係のゆがみを改善するためには本人の自発的な努力が必要だからです。
アキラさんは自分の大きな失敗をキッカケにASDを自覚しましたが、その後の努力は拒否し、ASDを言い訳にするようになってしまいました。
逆に、現状を改善したいと感じてて努力できる人であればASDと自覚することはプラスになりえます。
あなたのパートナーがどちらのタイプか、よく見極めてください。
Q. カサンドラ側が相手の特性を理解して言動を変える努力はできますが、アスペルガー側にはどんな努力の方法をお願いできることがあるでしょうか?
A. ケースバイケースなので「こうすれば良い」という事は言えません。
ASD本人が損得で考えた場合に「こうしなければ自分が困る」「こうすれば自分がいい気分になる」という【パターン】をいくつも教えるのが良いと思います。
「努力の方法をお願いする」のではなく、【あなた(夫)にとってこれが得になる】やりかたを「お願いの形で入れていく」ということです。
Q. 父が多分ASD。家庭内での複数人数のコミュニケーションはASDの人には難しいのでしょうか?
A. ASDの人にとって、「家庭」「家族」の認識は特殊です。
家族=自分の一部 だと捉えてるから(ので)、家族が自分の思惑と違うことを言ったりやったりするとパニックに陥ります。そのパニックを妻子への暴言や暴力で表してしまうことがあります。
また、「妻に対しては夫」「子供に対しては父親」という、重複した役割についての認知はASDの人にとって困難です。その結果、妻と子が同時に存在する場では自分がどういう立場でふるまえばいいか混乱してしまうのです。
Q. 別居などは「旦那さんがかわいそう」と言われます。むしろ夫も独りが気楽だろうと推測はしてるのですが、本人の気持ちを聞くことができないので、それも当たってるかどうかわかりません。私も夫を不幸にしたいわけではないのです。アキラさんは幸せそうでしょうか?
A.「旦那さんがかわいそう」と言う人は何かしてくれる人でしょうか?
してくれる人なら【今しんどいあなたの悩み】を理解してくれるよう頼みましょう。
してくれない人ならそれは「かわいそう」と言う自分に満足しながら呪いをかけてくる人ですから、無視しましょう。
結婚して何年か存じませんが、夫婦として年月を共にしたあなたが「夫も独りが気楽だろう」と推測するなら、それは正解でしょう。そして旦那さんは別居したら【不便】は感じるでしょうけど、【不幸】にはなりません。(これは私ツナが保証してもいいです)
一人になったアキラさんが不幸になったかどうかは私自身が悩んでいたことですが、じつは彼の幸福の度合いは結婚前から今に至るまでずっと一定なのです。なぜなら彼の基準は自分の中の【快or不快】であり、環境に左右されないものだからです。ある意味とてもたくましいなあと思います。
<カサンドラの悩み>
Q. 家庭内別居もありでしょうか。
A. ありです。その場合は、お互い最初にルールやペナルティを細かく決めておくといいです。
Q. 夫は私と一緒に行動したいという人で、「なぜ二人旅じゃダメなの?」「一人旅は心配だよ」と反対します。自分の幸せ(楽しさ)を優先して一人旅に言っても罪悪感を感じるのですが、罪悪感とどうつきあっていけばよいのか。
A. 夫さんの心は幼児で、あなたが【目の届くところにいないと不安】なんです。「心配」という言葉を使っていますが、そうじゃなくて「不安」。
不安がってる幼児を置いて旅行に行くとなれば罪悪感があって当然ですが、実際の夫さんは大人なので、あなたが母親のようにそばにいる必要はありません。
実際、あなたが旅行に行った後に機嫌良く夫さんと生活できるなら、夫さんにとっても【利益】になりますよね。ASD特性のある人は自分の損得に敏感なので、「私の一人旅はあなたにとっても得になる事なのよ」とソフトに話してきかせるといいと思います。
罪悪感とつきあう必要はありません。そもそも夫に対して罪悪感なんて持たなくていいんですよ。
Q. 夫の苦手分野を理解した上で家庭内で支援するのが私自身の負担になる。どうすればいいのか?
A. かつての私のようなお悩み・・・
負担に感じるのは、あなたの心がまだ元気じゃないからです。
まず体と気持ちを上向きにするための努力を優先してください。愚痴を言ったり共感し合えたりする相手や場所を見つけてください。カウンセリングや息抜きなど自分を癒す方法をたくさん試してください。
心が元気になれば【夫への支援=めぐりめぐって自分のため】と思えるようになるので、そうなるまで自分の身体&心の癒しを。
Q. 夫が不倫してからアスペルガー傾向に気付きました。大反省していますが、見ていて不快になったので別居しました。話し合いができません。今はお金を全額入れてくれています。それで済んでラッキーでしょうか。私は愛情が欲しいです。
A. そもそも「愛情」というのは具体性に欠けていて、個々の解釈に違いがあるものです。そういった言語化が難しい情動の形は、ASD傾向のある人には理解しづらいのです。
「こうしてほしい」「こう言ってほしい」という具体性があると理解してもらいやすいですが、あなたが望んでいるのはそういう事ではなさそうですよね。その折り合いをどうつけていくかがあなたの大きなテーマになると思います。自分だけで解決するのは難しいかもしれません。他者に話を聞いてもらうなどして、時間をかけてゆっくり考えていただきたいと思います。
ラッキーかどうかは、あなたがどう思うかですよ。他人がどう思うかは関係ありません。
<お子さんについて>
Q. 我が家は子供も夫の言動に傷つき驚くことがあり、苦手意識を持っています。不安定になっています。どのようにフォローすればいいのか板挟みのようになっています。
A. 夫婦一対一でも難しいのに、子供が絡むと本当に難しくてキャパオーバーになりますね。私も長らく悩んできたのでとてもわかります。
最優先させるのは子供の気持ちです。
お父さんが苦手だと思う子供の気持ちに寄り添い、不満や苦情を聞いてあげて、その気持ちを否定しないで、「私はあなたの味方だから安心して」という姿勢をしっかり見せることが大切です。
その後に「お父さんは決してあなたのことを嫌いではない」「お父さんが悪い人なのではなく、お父さんの言動が悪い」といったフォローをしておくといいと思います。父親=悪と思ってしまうと子供の心が削られていきます。
ちなみに我が家の場合は10歳過ぎてからアキラさんの特性の説明をしました。(わかりそうな部分から)
Q. 自分がどうしたいかを考えると別居や離婚という道が見えてくるのですが、子供の事を考えざるを得ません。特にASD夫の場合、離れていれば子供の事も忘れてしまい、子供が合いたいと言っても面倒くさがりそうで、子供が「愛されてない」と悲しむのではないかと思うとやりきれません。ツナさんのお子さんはどうでしたか。
A. お子さんの年齢や経済状況が大きく関係することなので簡単にはお答えできないのですが、
そもそも【離れたら存在を忘れたり会うのを面倒くさがるような父親】だと一緒に暮らしていても子供が「愛されている」と実感できる関係になるのは難しい気がするんですが、その点はどう思われますか?
カサンドラの人は、パートナーが未来を考えない分、未来を考えすぎてしまう傾向があります。そういう癖が身についてしまってるんですよね。(自戒を含めて)
でも、実際どうなるかわからない事にまで考えをめぐらせて不安になる必要はないんですよ。その時々で臨機応変に考えるほうがいい場合もあります。人生ってけっこう長いから、失敗したと思うことがあっても、その気さえあれば取り返せるものです。
【あなたがどうしたいか】が重要です。それによって子供の運命が変わるとしても、あなたがしっかり寄り添って受け止めてあげれば大丈夫です。
あるいは、考えた末に【子供のためにこのままでいる選択をする】と決めるならそれもアリです。それもまた「自分の意思による選択」なのですから。
我が家の場合は別居後もアキラさんに定期的に会う機会があり、子供はそれなりの愛情も感じているようです。「困った人だな」とは思ってますが、嫌いとか憎いとかは無いようです。
でも一番子供のためになったのは、私の精神状態の安定だったと思います。
<ツナ先生への質問>
Q.(複数質問)離婚しなかった(しない)のはなぜ?子供への罪悪感?
A.
- 別居することになった時、私はカサンドラ状態が重く、もうこれ以上「重大な決定」をしたくなかった。
- 別居後しばらくして子供から「離婚はしないでほしい」と言われたが、別居したらカサンドラが回復に向かったので、私自身が現状に満足していた。
- アキラさんのことが憎いわけではなく、関係を断ちたいわけでもない、と自覚した。
- 多少の打算もアリ。
…ただし今後の事はわかりませんが。
Q. 今はもうアキラさんのことは異性として好きではないということですか?また、もし、最初からアスペルガーだと気づいていたら、一緒に生きていく選択はしていなかったですか?
A. 今はアキラさんを異性としては見ていません。「かつて好きだった人」くらいの感じです。
そもそもカサンドラどん底期以降は(回復しても)異性愛を求める気持ちが消滅しました。
最初からアキラさんがアスペルガーと気付いていても結婚したと思います。彼は私にとって本当に良い人で好ましい人だ(った)からです。ただし、結婚後のあらゆる選択は違うものになったと思います。
Q.(複数質問)社会の価値観などの呪縛に気付いたキッカケ、呪いから解放されたキッカケはありましたか?
A. カサンドラから回復しつつある頃に、ふと「本来の私はどうだった?」と考え、結婚前の自分のことを思い返しました。社会のいろんな呪いを振り切って私が私であることを誇らしく思っていた時期のことです。なぜそれが今は失われてるのか?「世間(他人)の目や評価」を気にしたり、「夫の責任=妻(私)の責任」と思うようになったせいじゃないか?と思い至りました。
世間(他人)は批判はしてくるけど助けてくれない。
夫の責任を背負っても誰も(夫も)評価してくれない。
そんな無駄なものを気にしてるから自分らしくいられないのでは?と気付いたのです。
(カサンドラの間は気付けなかった。気力体力が戻ってからの話です)
<支援する側のかたから>
Q. 診断を受けてない夫に、妻や周囲から「あなたはアスペだから」と言ってしまうのは、そこからこじれてしまわないでしょうか?
A. 懸念なさってる通り、未診断の人に「あなたはアスペルガー(ASD)」と言うのは危険です。
上で答えたように、本人が困り感を持っていてその正体を知りたいと感じる時まで封印したほうが良いです。困り感を持っていない時に指摘しても反発と敵対視が生まれるだけで、関係性を改善する道のりが困難になります。
Q. どこまでがASDだから、カサンドラだから、なのかが難しいと思いました。
A. ASDについては【夫婦関係や親子関係における自他の同一視】と【生活に支障が出るほどのこだわりの強さ】という特性が強く出ていることが問題になります。(ASDでもこれらが薄い人もいます)
カサンドラについては診断基準がないので、「私はカサンドラです」と言われたらそう受け止めるしかありません。
重要なのはASDかどうかではなく、「夫のASD特性が妻を悩ませて心身の不調を招いている(=カサンドラ)」ということです。夫婦での話し合いや譲り合いや相互理解といった努力が通用しないのが、いわゆる「普通の夫婦の悩み」と違うところです。
これはもしかして!?と疑わしい場合、アプローチとしては「それはわざとやってるのではなく、変えられないものかもしれない」など、情報を小出しに提示していくといいかと思います。
2021年3月31日
事務局 AJ
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大人の発達障害講座 『カサンドラ症候群への 支援と脱却』
10月13日(土)に、スクエアの公開講座として、大人の発達障害講座 『カサンドラ症候群への支援と脱却』を開催しました。
外部講師としてお招きしたのは、大好評『旦那(アキラ)さんはアスペルガー』シリーズの著者である「野波ツナ先生」です。
野波先生は、“カサンドラの苦しさはまだまだ知られていない。もっと広く、この苦しさを知っていただいて、スクエアのような団体から支援の輪が広がってほしい”という想いで、講演の依頼をご快諾くださいました。
今回の講座の定員は40名でしたが、一般の方々からたくさんのお申し込みをいただき、参加者(カウンセラー・一般の方々)とスタッフを合わせると50名超となりました。
みなさん、真剣な眼差しで野波先生のお話に耳を傾けていらっしゃいました。
発達障害やアスペルガー症候群の概要・アキラさんの言動例・カサンドラ症候群の概要・野波先生ご自身のカサンドラ体験の詳細・医療や支援に関する情報など、盛りだくさんの内容について、漫画を引用しながら、実に分かりやすく伝えて下さいました。
講演後の質疑応答でも、とても丁寧にご回答をいただきました(ご質問がとても多く、一部のみのご紹介となってしまい、申し訳なく思っております)。
どの内容も心に残るものでしたが、次の2つのことは、支援者のひとりとして心に留めておきたいなぁと思いました。
*カサンドラは「関係性の病」。だから、加害者も被害者もいない。
*カサンドラからの回復に必要な力の源になるのは、「他者からの共感」。
本講座が、今まさにカサンドラで苦しむ方々の「力の源」や「希望」につながれば、また、その支援をしていただける方がお一人でも増えれば、と強く願っております。
最後になりますが、野波ツナ先生、株式会社コスミック出版のご担当者さま、ご参加いただいたみまさまに、心よりお礼を申し上げます。
東京メンタルヘルス・スクエアでは、カウンセラーの自己研鑽にふさわしいテーマで、また、一般の方々への情報提供の機会となるような講座を企画・開催して参ります。
講座を通して、みなさまと「つながり」が生まれることや、「こころがホッとする時間」を共有できることを楽しみにしております。
人財開発局ボランティアスタッフ 成合智美
-お願い-
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公開講座[アダルトチルドレン]~支援者として身につけておきたいこと~
いつもスクエアブログをご覧いただき、ありがとうございます。
本日は、人財開発局から、外部講師をお招きして開催した「公開講座[アダルトチルドレン]~支援者としてみにつけておきたいこと~」の内容をお伝えいたします。
当日は、収容人数30名の会場が満席の状態で、熱気あふれる状態でスタートしました。
参加者はカウンセラーや教員、看護師等、それぞれの役割は違っても、人と深く関わる仕事をされている方々です。
まずは、「アダルトチルドレン」や、昨今、耳にすることが多くなった「機能不全家族」の概念等、基本的なところから、とても丁寧に説明をしていただきました。
アダルトチルドレンとは、暴力や虐待、過干渉や依存症のメンバーがいる家族で育ったことで、成長しても「生きづらさ」を抱えた人をいいます。
当日、アテンド(お世話係)として参加した人財開発局のボランティアスタッフの一人は、
「講座前の予習として朝から本を読もうとしたけど、あまりにも辛くなって最後まで読めなかった」と言いました。
私たち支援者は、そのように苦しむ方々に何ができるか、をこの講座で詳しく学ぶことができ、これからも微力ながらお力になれれば、と思いを強くする講座でした。
当日、ご参加いただいたみなさん、そして、講師をご担当いただいた臨床心理士、IFF・CIAP相談室カウンセラー、西尾リプロセス協会認定リプロセス・カウンセラーである黒木先生へ心より御礼申し上げます。
東京メンタルヘルス・スクエアでは、今後もさまざまなテーマで講座を開催し、カウンセラーの自己研鑽と共に、情報提供の機会を創出していきます。
引き続き、よろしくお願いいたします。
人財開発局長 増田千奈津
マインドフルネス講座を実施しました
マインドフルネス公開講座を実施しました
9月9日(土)にマインドフルネス講座を実施しました。
20名超の方が参加し、実体験を中心に3時間マインドフルネスの世界に集中していただきました。
「3時間があっという間だった」「どうやるのかがわからなかったので、実際に体験できてよかった」「明日から試してみます」と嬉しい声をたくさんいただきました。
私も3時間の講座でなぜか心がすっきり。「今、ここに集中する」「あるがままを受け止める」って大切なことですね。
東京メンタルヘルス・スクエアでは定期的に皆さまの「こころ」「人間関係」にお役に立てる公開講座を実施しています。
聞いてみたい講座などがあったら、ぜひご意見をお寄せください。
企画・広報局長 みずぬま