自傷・自殺のことを理解する~自分を傷つけない生き方、苦しんでいる人を支援する方法~
自傷・自殺のことを理解する~自分を傷つけない生き方、苦しんでいる人を支援する方法~
2025年1月11日(火)精神科医で自傷・自殺対策を幅広く活動をされている松本俊彦先生を講師にお招きをしたセミナーを開催しました。
先生は薬物依存症を専門とされております。
今回のセミナーでは先生の豊富な臨床経験と知見に基づかれた自傷行為や自殺に関する様々な要因や問題点、そして支援をする側の留意点などについて大変リアルでわかりやすくお話しくださいました。
そのセミナーで語られた内容について私が思ったこと、感じたことなどをまとめさせていただきました。
リストカットやオーバードーズ(以下OD)について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
じつは、どちらの行為も初回こそ命を絶ちたいとの希死念慮がある人がほとんどですが、その後何度も繰り返すのはその行為をしている時だけは抱えている悩みや心の痛みから離れることができる、言い換えればいわば「今を生きるため」にその行為に及んでしまうという理由があるそうです。
さらに難しいことに、その「今を生きるための行為」を継続していく先には、自死行為に進んでいく可能性が高まっていくというのです。生きるための行為が死に近づける。この複雑な構造に心が凍る思いがしました。
また松本先生は、支援者がリストカットやODを頭ごなしに否定をするのは、その人のためを思ったとしても正しい対応ではないと見解を示してくださいました。
まずはその行為の背景に必ずある要因に関心の目を向けて関わることが重要なのです。
自身の経験やこうあるべきとの持論を押し付けるのではなく、その行為を否定せず、その人をそのまま受け入れて理解をしようとする姿勢が大事だということがよくわかりました。
「この人になら、ここでなら話せる。自分のことを話していいんだ。」と感じてもらえるような良好な関係性を徐々に築いていく。
そしてしっかりとした信頼関係ができたうえで、リストカットやOD以外に気持ちが落ち着く、あるいは痛みがやわらぐ方法を一緒に見つけていくということが支援者の目指すところなのではと感じました。
死にたいと思うほどのつらい悩みを抱えている人たちが安心できる居場所を作る。
その場所は人によって作られます。
そのためにはどのように支援の手を差し伸べれば良いのか・・・。
「話をちゃんと聞いて理解してくれる社会をつくる」「安心して自分の気持ちを話すことができる場所をつくる」ことを目標に活動している、私たちにとって、進むべき道、やるべきことを改めて教えていただいた時間でした。
松本先生、とても貴重なお話しをありがとうございました。
事務局 Yoshiko T.