GRAVITY 「グラビティ」特別イベント参加報告 (ザ・メイキング)

グリーフケア入門~大切な人を失った哀しみに寄添う~

グリーフケア入門~大切な人を失った哀しみに寄添う~ 2025年4月21日開催
先日、グリーフケアの専門家である井手敏郎先生を講師にお招きをしてTMSこころのセミナーが開催されました。
井手先生は一般社団法人 日本グリーフ専門協会士の代表理事でグリーフケアに関する著書も出版されていらっしゃいます。今回のセミナーでは「グリーフケア」という大変難しいテーマについてお話しをお伺いして、私なりに感じたことをまとめてみました。
まず「グリーフ」とは、皆様ご存じかと思いますが「悲嘆」という意味で、文字通り悲しみや嘆きを表わします。
大事な人や自分にとって重要なものを失った時に起こる感情ですが、そこに「反応」が加わる場合があります。
身体に出る反応でいうと、例えば、食事が摂れなくなる、不眠や過眠になるなどがあります。
他にも、人に会いたくない、仕事に集中できないなどの社会的な影響が生じることもあり、それらを喪失による「悲嘆反応」と呼びます。
そのような状況にある人にどのような対応をすればよいのか・・。大変難しいですね。
そんな時に「同行者であること」という感覚を一番大事にして欲しいと先生はおっしゃいます。
ここで言う「同行者」とは遺族の方に何が起きているのかを深く理解をすることだそうです。
身体的な反応を例にとると、たくさん食べる様子を見た人が「そんなに食欲があるのだったら、大丈夫だね。」と思ったとします。
たしかに一見すると元気そうに見えますが、そこだけで判断をするのは難しいのです。
心にぽっかりと空いた穴・・。その喪失感や空虚感を別のことで満たそうとすることがあるからです。
ある一面だけをみて判断をしないという重要性を感じました。
さらに、同じような体験をしても人それぞれ思いや感じ方は違うということへの理解も必要です。
「自分も同じだったので、この人もきっとこうだろう。」と思い込んでしまわないようにしたいですね。
グリーフケアに求められる「同行者であること」とは・・。
大切な人を失くした方はどのような心理状態が起こりやすいのかを理解をすること。
井手先生、とても貴重なお話しをありがとうございました。
事務局 Yoshiko T.
いじめ・不登校を生まない笑顔あふれる学校づくり~教育漫才を核に~

2025年3月13日、田畑栄一先生を講師にお招きしたセミナーを実施いたしました。
田畑先生は学校長として10年の経験をお持ちで、現在は教育コンサルタントとしてご活躍されていらっしゃいます。
今回のセミナーではご自身が考案された「教育漫才」について、色々とお伺いして私なりに感じたことなどをまとめさせていただきました。
早速ですが「教育漫才」と聞いて、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
私は「楽しそう!」と思う反面、「笑いを取りにいくネタを作るのはけっこう大変なのでは・・」と思いもありました。
漫才の手法として先生が教えて下さったのが「三段落ち」~繰り返し編~でした。
例として「乗り物」をテーマにした台本を見せて下さったのですが、シンプルだけどボケとツッコミの掛け合いがおもしろくて笑ってしまいました。
気持ちがほんわかして本当に楽しく感じたのです。
それが、まさに先生が目指す「温かい笑い」だと思いました。
時として学校の現場において、相手を否定したりバカにするといったいわゆる「冷たい笑い」が起きることがあります。
そのような笑いの中では良好な人間関係を築くのは難しいものです。
そんな「冷たい笑い」を起こさないためにも「教育漫才」は有効だと先生はおっしゃいます。
さらに、教育の現場における最優先事項として先生が挙げられた「自殺防止」と「不登校等の改善」についてですが、どちらも人間関係やいじめが大きな要因となっています。
いじめをなくすためには「温かい笑顔あふれる学校」が必要です。
先生が提唱する「教育漫才」は温かい笑いを生み、みんなの笑顔を育みます。
まさに「教育漫才」を取り入れて実践することは、今、学校で起きている様々な問題を解決に導く糸口になるのでは・・と思います。
余談となりますが、先生のお話しに触発されて実は後日、漫才を作ってみました。
先生のお話しを思い出しながら「三段落ち」のネタを色々と考える時間はとても楽しいものでした。
「温かい笑い」を育む「教育漫才」。
皆さんもぜひ一度、作ってみてはいかがでしょうか。
事務局 Yoshiko T.
『みんなでつくろう自分の居場所~Place to be~』のご報告(1)

話をゆっくり聴いてもらえる人がそばにいるって、いいよね。
ワークショップ「Place to be」レポート(その1)
こんにちは。東京メンタルヘルス・スクエアです。
今日は先日開催したワークショップ「Place to be」のレポートを2回に渡ってお伝えしたいと思います。
自傷・自殺のことを理解する~自分を傷つけない生き方、苦しんでいる人を支援する方法~

自傷・自殺のことを理解する~自分を傷つけない生き方、苦しんでいる人を支援する方法~
2025年1月11日(火)精神科医で自傷・自殺対策を幅広く活動をされている松本俊彦先生を講師にお招きをしたセミナーを開催しました。
先生は薬物依存症を専門とされております。
今回のセミナーでは先生の豊富な臨床経験と知見に基づかれた自傷行為や自殺に関する様々な要因や問題点、そして支援をする側の留意点などについて大変リアルでわかりやすくお話しくださいました。
そのセミナーで語られた内容について私が思ったこと、感じたことなどをまとめさせていただきました。
リストカットやオーバードーズ(以下OD)について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
じつは、どちらの行為も初回こそ命を絶ちたいとの希死念慮がある人がほとんどですが、その後何度も繰り返すのはその行為をしている時だけは抱えている悩みや心の痛みから離れることができる、言い換えればいわば「今を生きるため」にその行為に及んでしまうという理由があるそうです。
さらに難しいことに、その「今を生きるための行為」を継続していく先には、自死行為に進んでいく可能性が高まっていくというのです。生きるための行為が死に近づける。この複雑な構造に心が凍る思いがしました。
また松本先生は、支援者がリストカットやODを頭ごなしに否定をするのは、その人のためを思ったとしても正しい対応ではないと見解を示してくださいました。
まずはその行為の背景に必ずある要因に関心の目を向けて関わることが重要なのです。
自身の経験やこうあるべきとの持論を押し付けるのではなく、その行為を否定せず、その人をそのまま受け入れて理解をしようとする姿勢が大事だということがよくわかりました。
「この人になら、ここでなら話せる。自分のことを話していいんだ。」と感じてもらえるような良好な関係性を徐々に築いていく。
そしてしっかりとした信頼関係ができたうえで、リストカットやOD以外に気持ちが落ち着く、あるいは痛みがやわらぐ方法を一緒に見つけていくということが支援者の目指すところなのではと感じました。
死にたいと思うほどのつらい悩みを抱えている人たちが安心できる居場所を作る。
その場所は人によって作られます。
そのためにはどのように支援の手を差し伸べれば良いのか・・・。
「話をちゃんと聞いて理解してくれる社会をつくる」「安心して自分の気持ちを話すことができる場所をつくる」ことを目標に活動している、私たちにとって、進むべき道、やるべきことを改めて教えていただいた時間でした。
松本先生、とても貴重なお話しをありがとうございました。
事務局 Yoshiko T.
~発達障害・グレーゾーンの「あの人」との快適な関係のつくり方~セミナーのご報告

~発達障害・グレーゾーンの「あの人」との快適な関係のつくり方~
2024年9月29日(日)野波ツナ先生のチャリティーセミナーより
12月も押し迫り寒さがましてまいりました。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
東京メンタルヘルス・スクエアでは、今年も様々なセミナーを開催してきました。
今回は「発達障害・グレーゾーンの人とのより良い関係を作るにはどのようにすればよいのか」を振り返ってみたいと思います。
さて突然ですが、皆さん「カサンドラ症候群」をご存じですか?
「自閉スペクトラム症」(ASD)のある人のパートナーや身近な人が、ASD当事者と良好なコミュニケーション・人間関係性を築くことができず、その精神的ストレスから心身にさまざまな症状が出ている状態をあらわす言葉です。
その症状は様々ですが、一例として「頭痛」や「不眠」、「動悸」「めまい」、あるいは「自己肯定感の低下」や「無気力」「不安障害」、さらに「抑うつ状態」を引き起こすなど身体的、精神的なものがあるとされています。
では、もし「カサンドラ症候群」になってしまったらどうすれば良いのでしょうか。
今回のセミナーは、ご自身がカサンドラ症候群でASDのパートナーさんとの日常を綴った著書がたくさんの人から支持をされている、野波ツナさんを講師にお迎えしました。
ツナさんは、「アキラさん」と結婚した当初から『個性的でおもしろい人だな』と思っていたそうですが、その後、出産やお子さんの成長、そして家の購入と家族としてのステージが進むごとに「アキラさん」に対しての違和感がツナさんの中でどんどん大きくなっていきます。
ツナさんは本やネットで調べたり、医師に聞いたりして色々とこの状況を何とかしようと頑張ったのですが、その効果は感じられずますます苦しい思いをすることになるのです。
一生懸命にやっていることが空回りしていると感じてしまい虚しさや悲しさが大きくなるばかりで、ツナさん自身の「カサンドラ症候群」も悪化していきました。(詳細はツナさんの「旦那(アキラ)さんはアスペルガー」シリーズをお読みください)
その状態で「アキラさん」にきちんと向き合うことは難しく大変でした。やはり、自分自身が元気でないと理想的な対応はできないと、後になって気がつかれたそうです。
大事な点は「アキラさんの持つ特性」に絞って対応をするということ。
つまり、「ASD」や「カサンドラ症候群」という立場の人でもその特性や悩みはそれぞれで、対応の方法も画一的ではないということなのですね。
これは、ツナさんが実際に経験した当事者だからこそわかるし、そのことを皆さんに伝えたいとの思いが強く感じられました。
これ以外にもツナさんがお話ししてくださったことの一部を挙げてみたいと思います。
・お互いに自分を取り戻すための時間や場所を準備することは大切。
・「相手の人の考え方を変えるのは無理。」ただし、「特性に適した接し方で相手の行動が変わることはある。(無理はしないでできそうなことを試してみる)
・「カサンドラ症候群」になってしまったら我慢や無理をしないで、もうダメだと思ったら誰かに助けを求める。きっと誰か助けてくれる人がいるはず。
・「そこから逃げてもいい」という気持ちをいざという時の隠し玉として持っていると良い(そう思っているとぎりぎりまで追い詰めることはなくなる)
どれも新しい気付きをいただける素晴らしいメッセージでした。
現在、お二人は距離をおいた生活をしているそうですが、以前より良好な関係を築かれているそうです。少し距離を取ることによってお互いがラクに居られると穏やかにお話しされたツナさん。
参考にしたいことや考えるヒントをたくさんいただきました。
とても貴重なお話しをありがとうございました。
人と関わることの難しさ。そして難しいゆえに様々な悩みもあればその一方で、楽しみも生まれてきます。
お互いが無理をしないで程よくラクにいられる関係が続けられる事は大事ですね。
日常において、大切な人たちとそのような関係を築くことができると良いなと改めて感じました。
本日も、最後まで目を通していただきましてありがとうございました。
これからも皆様により良い記事をお届けしたいと思っておりますので、
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
事務局 Yoshiko T.
iPhoneアプリ「時もち」開発者様からご寄付をいただきました

iPhoneアプリ「時もち」の開発者である、釘本様、小出様からご寄付をいただきました。
「時もち」とはスマホ依存対策のアプリケーション。スマホの利用を自主的に制限して、自分の時間を大切にするためのアプリです。
「時もち」アプリの説明によると、私たちは1日平均2600回スマホに触り、10分に1回手に取っており、平均で1日4時間、若者の2割は7時間を費やしているそうです。
確かに私自身も気が付くとスマホをいじってしまっているし、電車の中で周りを見回すと8割くらいはスマホをいじっているように感じます。
スマホの過度な使用は睡眠障害やうつ、記憶力や集中力、学力の低下を引き起こすそうです。
私たち東京メンタルヘルス・スクエアは、年間で6万件以上の対面・オンライン・電話・SNSカウンセリングを承っていますが、ご家族、特にお子様がスマホ依存になっていて困るというご相談を受けることが少なくありません。

「時もち」は自分が利用制限をかけようと考えるアプリ(例えばゲームやSNS、動画、情報提供アプリ)を使用できる総時間(もしくは曜日ごとに使わない時間帯を決めることもできるようです)を決めて、その時間を超えるとアプリを使用できなくなる仕組みです。
そうすることで自主的にスマホを使用しない、自分の時間を作り出そうということですね。
App Storeの評価を見てみると、スマホ依存を解消できそう、シンプルで使いやすいなどとても高く評価されていました。
自分でブロックすると決めた時間になると、制限をかけたアプリは一切使用できなくなります。
そして、どうしても使用したいときにはブロックを解除するために100円を支払う仕組みになっています。
(「時もち」は無料アプリで、ブロック解除さえしなければずっと無料で使用できるようです)
そしてこの100円の一部が、メンタルヘルスのための活動をしている団体に寄付(残りは開発・運用費用に使用)されています。
私たちがいただいたご寄付はこのブロック解除時に課金されたお金なんですね。
ご寄付いただくことに心から感謝しつつ、一方で、「時もち」のご利用者のみなさまにはぜひブロック解除をせず(課金することなく)ご自分の時間を作って豊かな生活を過ごしていただきたいと深く願っております。
でも、ストイックすぎる生活もストレスになるので、日々ご自分の時間を作っていただきながら、たまには自分のやりたいことを許してあげて、、、なんて感じがいい塩梅なのかもと思ってもおります。。。
私たちにいただいたご寄付は、無料電話相談、無料グループワークなど、安心して苦しい気持ちを話すことができる居場所づくりに大切に使わせていただきます。
「時もち」開発チームのみなさまのこれからのご活躍を心から祈っております。
事務局長 ぬま
受賞・受託歴
NPO法人 東京メンタルヘルス・スクエアが受賞・受託した事業について
2017年~SNSやチャットで相談を受ける活動をしています
厚生労働省
自殺防止対策事業「まもろうよこころ」で受託者として採択されています。


2023年4月~
休眠預金活用事業 うつ病予防支援
「東京からうつをなくす」事業に採択され活動をしています
https://www.kodokodo.or.jp/general-9
休眠預金活用事業についてはこちら
メディア公開情報
メディア掲載 2024年の主なもの
2024/4/24 読売新聞 地域都民版
アバターほっとライン
悩みをアバターに相談 子供が打ち明けやすくなる
悩み相談のハードルを下げる効果が期待され、
デジタル化 相談員負担軽減にもつなげる狙い
2023/8 日刊SPA
子どもの自死が増加する「9月1日問題」。“声を出して相談ができない問題”への対抗策が模索される
2023/8/30 神奈川新聞 朝刊社会面
9月1日問題とアバターほっとラインの紹介
悩みを抱え込まないで SNS相談のニーズが高まる
2023/8/30 NHKテレビ
9月1日問題とアバターほっとライン
夏休み明けの子どもの心の不調にアバターを使った相談の紹介
現地取材 放映とウェブサイトへの記事
2023/8/30 NHKラジオ
アバターほっとライン
9月1日問題とアバターほっとライン 8分間ON AIR
2023/1/21
共同通信社より各社へ配信(新聞5社 記事掲載)
悩みに寄り添い命守る
ゲートキーパー養成進む
コロナで自殺数の増加が続き、身近で見守り声掛けする「ゲートキーパー」と呼ばれる存在が重要
専門職でなくてもその役割を担うことができ、その養成の取り組みが進んでいる
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2022年 9件
2021年 35件 など多数あり
~「バランスの良い考え方」で快適に生きる~
~「バランスの良い考え方」で快適に生きる~
2024年7月19日(金) 玉井仁先生の講座より
毎日の暮らしの中で「今日は良い日だったな」と思う日もあれば「今日はあんまり良い事がなかったな」と感じる。
そんなことはありませんか?
おそらく誰にでもそのような「良い時」と「悪い時」はあるのではないでしょうか。
感情の波や起伏が起こるとストレスが溜まり疲れを感じやすくなります。
「じゃあ、どうすれば良いのかな?」と思った方に、ぜひ知っていただきたい方法があります。
調子が良くない時もできるだけ穏やかな気持ちで過ごしたいものですよね。
そこで、今回は【「バランスの良い考え方」で快適に生きる~認知行動療法(CBT)のエッセンスをライフスタイルに取り入れよう~】というテーマで
メンタルヘルスの専門家であり、これまで数々の書籍を執筆している玉井仁先生にお話しをしていただきました。
ある事象が起こった時に、その受け取り方やものの見かたを「認知」と言います。
その「認知」に働きかけてストレスなど心の負担を軽くしていく方法が「認知行動療法」です。
うつ病など精神疾患の治療法としても知られていますが、それだけではなく日常の心の問題への対処法としても効果的だとされています。
生活の中で感じるストレスやイライラを「認知行動療法」を取り入れることによって軽減することができると良いですね。
それでは、早速、その具体的な方法についてこれからご紹介していきます。
「バランスの良い考え方」は時には難しいもの。
人は「良い時」と「悪い時」があります。「悪い時」はどうしてもバランスが偏ってしまいます。
その気持ちが揺れる様子を、玉井先生は「やじろべえ」のようだと例えています。
傾いたり揺れたりしながらも、一番安定するバランスを見つけるということだそうです。
そして、その「バランス」は人によってそれぞれ違います。
ある事象が起きた時にイライラする人とそうでもない人がいるように、私たちの感じ方やその時の感情はバラバラです。
だからこそ、自分自身がどうなるとバランスを崩しやすくなるのかを理解しておくことが大切なのですね。

「何とかしたいこと」に気がつくのが大事
今、自分の調子がどんな状況なのかを考えた時、「少し不調かも・・」と気がついたとしても「忙しいから・・」などの理由でついスルーしてしまいがちです。
それは、「まだ大丈夫!」と信じたい気持ち、そしてそう思い込んでしまう心理が働いてしまうからです。
そうするうちにだんだんと体調が悪くなってきて、時には眠れないなどの身体的な不調が現れることがあります。
こうなると大丈夫ではないですね。できればそうなる前に何かしらの手立てを講じたいものです。
そのためにまず、思考の固さについて考えてみましょう。
思考の固さについて~柔らかな考え方~
「考え方」には固さがあります。その固さがどんな固さなのかということが重要です。
例えば何かに対して「こうあるべき」と考えることや白黒はっきりつけたいという思い。これが「考え方のクセ」にあたります。
そして、このような場合は「考え方」がカチコチの固い状態だといえます。
反対に、「考え方」が柔らかすぎても色々と支障が生じます。
つまり、その中間の適度な柔軟さでいることがちょうど良いとされます。
例えば、会社で仕事をしていて「今日は疲れたなあ・・」と感じた時、どうしますか?
「終わるまで絶対に帰らない!」あるいは「もうやりたくないから、会社を辞めてしまおう!」と考える。
どちらも極端ですね。
こんな時に「今日は疲れたから早く帰って休もう。また明日やればいいよ」と思う。
これが、ちょうど良い柔らかな考え方だと玉井先生はお話しくださいました。
ついつい頑張ってしまう人も時には頑張りすぎない事が大切です。
極端に偏らないというこの考え方、これなら私たちも取り入れやすいのではないでしょうか。
気持ちが揺れた後に回復をする
例えば、すごく嫌な事を言われた時、心の中では「イラっ」としてもそれをそのまま言葉にしないことが皆さんもありませんか。
もちろん、人間関係を壊さないためには大切なことですが、その分ストレスを感じたりします。
嫌な事を言われて嫌な気分になること自体は自然なことです。大事なのはそこから回復できるかどうかなのです。
つまり「気持ちが揺れる」⇒「回復する」この二つがセットではじめて健康といえるのです。
「基本認知モデル」を使って状況の整理や自己理解をする
私たちの周りで起きる様々な刺激や出来事、入って来る情報について認知行動療法では「思考」「感情」「行動」「身体」の4つの枠組みで見ます。
ここで参加者の方から次のような質問がありました。
【質問】「認知行動療法」では「行動」を使う場合、具体的にはどのような事をしますか?
この質問について玉井先生は次のように回答してくださいました。
例えば、職場で「私はAさんから嫌われているのではないか?」と思った時のケースで考えてみます。
そこで、「Aさんに本当に嫌われているのかどうかを検証するための行動をする」とします。
その行動として⇒「挨拶をする」と決める⇒実際にAさんに挨拶をしてみる。
返事がAさんから返ってくる⇒気分が変わる⇒「あの時はたまたまこの人、機嫌が悪かっただけで私は嫌われていなかったのだな」と思う。
いかがでしょうか? このようにちょっとした行動が時に気分を大きく変えるものとなるのです。
こういったことは、おそらく皆さん何かしら普段から行っているのかもしれませんね。
そして、この時「自分の状況を少し引いて見る」ということが重要だと玉井先生からのアドバイスがありました。
つまり自分自身のことですが、すこし引いたところから俯瞰してその状況を見てみることが大切なのですね。
「認知行動療法」では「セルフモニタリング」と呼びますが、「引いて見るということ」を練習して少しずつ身につけていけると良いのではと思いました。
不調を乗り越えたいときの方法について
「不調」は誰にでもあるものです。
では、「不調」の時はどのように対処をすればよいのでしょうか。
ここで玉井先生がおすすめの3つの方法をご紹介します。
「7人作戦」⇒自分以外の7人に置き換えてみる。家族や友人、あるいは歴史上の人物など7人を思い浮かべて、「今、この状況でこの7人ならどう思うのか?」と考えてみる。
「最悪な状況と比較する」⇒今よりもっと最悪な状況を想像して、「うん、それに比べると今のほうがまだ良いな」と考える。
「ツッコミを入れる」⇒苦しい思いをしている時に「また、自分で自分を追い込んでいるね~」と自分自身にツッコミを入れる。この時に大事なのはユーモア。
ちなみに玉井先生の一番のお気に入りは「ツッコミを入れる」ことだそうです。
よくご自身に入れているそうですので、どのようにツッコむのか機会があればぜひ聞いてみたいですね。
さて、ここまでいかがでしたでしょうか。
今回の玉井先生のお話しの中に「この方法があったのか!」や「こう考えると良いのか・・」など様々な気づきがあったのではないでしょうか。
こうあるべきとする「べき思考」や、物事をはっきりさせたい「白黒思考」なども「考え方のクセ」です。
その「クセ」を客観的に分析してみるとバランスを崩しやすい原因であることがわかります。
ただ、そのような「クセ」があったとしても「練習をするとその偏ったクセが治せるようになる。」とのお話しがありました。
肩の力を抜いて、自分がラクにいられる方法を少しずつ試していく。
続けるうちにだんだんと変わることができるのだ・・と思うと気持ちがス~ッと軽くなりますね。
もし、どうしてもその方法が見つからない場合は、誰かに話しを聴いてもらうのも良いかもしれません。
その結果として、気持ちがラクになって回復した時は、その前後の事象をチェックすることも大切です。
「こころ」と「身体」、両方の回復を意識しながら自分自身にしっくり合う方法を見つけたいですね。
私もできることからゆっくり無理のないように始めてみようと思います。
最後となりましたが、皆さんもこれを機に、今一度ご自身の「考え方のクセ」について考えてみませんか。
そして、少しでも気持ちがラクにいられる、ちょうど良いバランスを探してみてはいかがでしょうか。
だんだんと本格的な秋が近づいてまいりました。芸術の秋、運動の秋、食欲の秋・・・。今年はどのような秋にしますか?
空高く、爽やかな風が吹くこの季節、どうぞ心身ともに健やかにお過ごしください。
事務局 Yoshiko T.
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