AERA「コロナ禍の子ども」について取材を受けました
こんにちは。
東京メンタルヘルス・スクエアの広報スタッフAです。
一行コピーが印象的なニュース系週刊誌「AERA」の取材を受けました。
テーマは「コロナ禍の子ども」。
日々報道されるコロナ関連ニュースの裏で報道されない被害に遭っている子どもたちに、スクールソーシャルワーカーとして活動中の新行内がどのような想いで関わっているか、インタビューしました。
――AERAって、守備範囲の広い週刊誌ですよね。どのような目的で取材に来られたのでしょう?
「子どもたちは3月以降のコロナ禍において家にこもることが多くなり、ネットやSNSへの接触も増えたと思われれます。危ない目に合いそうになったり、実際に会ってしまったり、被害が出た(例えば性的な画像が拡散される、誘拐、強制わいせつ、ネット自殺など)などといった相談がSNSで増えていないか、その被害を防ぐためにどうしたらいいか意見を聴かせてほしい」という問合せでした。
――その問い合わせ、どう思いました?
「ネットと子ども」というAERAさんのテーマ、大変興味深いと思いました。
私にとって小中高の子どもは普段の相談で関わることの多い世代であり、ネット社会の動向や事件にも興味を持っています。
――新行内さんご自身も、ネットで事件を体験したことはありますか?
事件というほどではありませんが、SNSで失敗して怖いをしたことが何度もあります。
本名を出さずに完全プライベートのSNSで弱音とかを呟いていて、全く悪気はなかったのですが、ルール違反と受け取られる言動をしてしまったこともありました。それ以来、プライベートな内容をSNSで発信することは止めました。
――匿名になったつもりでも特定される恐れがある。SNSの怖い部分の一つですね。
それでもSNSに夢中になる心理は理解できます。SNSが悪というわけではなくて、必要とされている面もありますから。
――必要とされるのはどんな面だと思いますか?
今まで出せなかった声が出せることですね。
SNSは声の小さい人たちが自己表現できる場所、繋がれる道具になる。遠くの人とも匿名でつながることができる。それを必要としている人は少なからずいると思います。
――危険や被害を防ぐために、どうしたらいいのでしょう?
取材のときは6つお話しました。
(1)子どもたち自身が自衛力を身につけること
SOSの出し方、ネットリテラシー、困難に対して悩んだ上で答えを出す力を身につけられるように、学校や親が教育していく必要があります。
(2)親や教師が見守る
現実世界で目をかけてもらえない子がインターネット上で注目されているように感じると、不純な動機を隠した誘いにも応答してしまう傾向があります。
そうならないように見守り、ひとりにさせないことが大切です。
(3)周りが目をかける、声をかける
リアルなところでさみしさや満たされない気持ちを抱えて、心に隙間が空いている子たちに対して、悪意ある人が使う声かけの常套句は「相談に乗るよ」。この言葉を優しくかけられると、心の隙間にすっと入ってしまいます。
その前に周りが声をかけ、相談に乗ることが予防になります。
――私たちも「相談」が彼らの役に立つと信じてSNS相談の場を提供しています。
同じ言葉も悪意を隠して使うと、子どもたちを被害に遭わせることができてしまう…‥なんだかショックです。
(4)危険性の周知
これはマスコミの役目ですね。こんな危ない事件が起きた、皆さんこういうことに気を付けましょう。そういう注意喚起をどんどん発信して欲しいです。
(5)セキュリティシステム
フィルタリングサービスや子ども向け機能制限ができるスマホなど、システムで守れるところは活用した方がいいです。
――子どもは、親が思っている以上にデバイスを使いこなすことも多いので、親にも子どもを守るための知識が必要ですね。
(6)スマホの制限
事件に巻き込まれることがなくても、スマホのやりすぎは良くないです。学力、体力、視力の低下、ネット依存のリスクもあります。
ですから親子でスマホを購入前に話し合ってルールを決めることが大事です。ルールが守れなかったり、子どもが危ない目に遭いそうになったら親が介入できるようにすることも必要です。
――SNSで危ない目に遭ってしまい相談に来る子どもに、新行内さんならなんと声をかけますか?
「大変だったね、大変な目に遭ったね」のように声をかけます。
子どもは親や教師に怒られているかもしれない。怒られなかったとしても、自分で自分を責めている。それはかわいそうだし、誰かに責められるのもつらいですが、自分に責められるのが一番辛いと思うんです。だから、その辛さや大変さを理解しようとします。
危ない目に遭うような行動をしてしまった理由を聴いて、理解するように努めます。子ども自身が何故その行動に走ったかを理解できれば「どうしたら良かっただろうね?」と、話し合うこともできます。
――新行内さんらしい受け止め方ですね。
小学生〜中学生くらいまでは、この関わり方で被害を防止できることが多いです。
しかしそれよりも少し上の年代になると共依存のようになって、なかなか被害が終わらないこともあります。相手のことを「彼氏」「彼女」と認識して付き合っていると、騙されて性被害に遭うのとは少し意味合いが違ってきますから。
――そういう子どもには、どう関わるのですか?
少なくとも、見放すことはしません。スクールソーシャルワーカーと本人の関係を維持しておくように努めます。つながりがあれば、困ったことがあった時や危ない目に遭った時にサポートの手を差し伸べられますから。
――どういう子どもたちが、そのような被害に遭ってしまうのでしょうか。
日常生活で他者との関係が希薄な子は、危ういと感じます。
そういう子たちは、ソーシャルスキルを構築できていません。他者と関係を作る力、断る力、はぐらかす力、ごまかす力が育っていません。
さらにリアルで関係が希薄であるがゆえに、ネットでの関係をとても大切に思っていて切れるのが怖い。だから嫌なことを言われても断ることができずに言いなりになってしまう。
――ソーシャルスキルを育てるには、どうしたらいいのでしょうね。
本当は、家庭や学校、友達などとの関係の中で学んでいけたらいいと思います。もしそういう関係がなくて危険な目に遭ってしまった子たちには、今回の教訓から少しづつ学んで欲しいなと思います。
――カウンセラーには、どんな関わりを心がけて欲しいと思いますか?
自分のしてしまったことに後悔している子は、相談に来るとき相手の様子を伺っています。ちゃんと聴いてくれるのかな?また怒られるかな?と不安に思っていることが多いです。ですから、責めない、否定しないで聴いて欲しいです。
そのあとで、同じ目に遭わない方法を、ひとりの大人として子どもたちに教えてあげてください。そのためにカウンセラーにも正しい知識を持って欲しいです。
――取材を通じてAERA読者の方に本当に話したかったことは何でしたか?
危ない目に逢ってしまった子には事情があるのです。寂しさとか、愛情をかけられていないとか、断れないだけの事情が。
そういう事情や背景をわかろうとして欲しいです。
ダメなことはダメだよと叱るのはもちろん大切ですが、それだけでは根本的には解決しない。
そのことがAERAを手に取った人に伝わり、子どもたちへの理解が深まり、結果として子どもたちが危険な目に遭わないようになっていくことを願ってやみません。
【掲載記事】
◆雑誌
AERA 2020年7月6日増大号「裸の「自撮り」を送る危険」
◆WEB
被害に遭うのは「学校では目立たない子」? 中学生のSNS通じた性被害が急増(Yahoo!ニュース)
「裸の写真」送ってしまう子どもたち 背景につながり失う恐怖、「断る」スキルの欠如も〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)
広報スタッフA
■こころのほっとチャット(SNS相談)
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SNS相談(9) TMSとSNS相談の次ステージ
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(9)TMSとSNS相談の次のステージ
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
最終回はTMSとSNS相談の次のステージについてです。
――SNS相談で、次にやってみたいことは何かありますか?
カウンセラーと話すことがもっと自然になってほしい。生活の中に溶け込んで行きたい。翻訳機能等を使って海外の人とも話してみたいですね。
――カウンセリングが日常的になると良いということでしょうか?
日常にカウンセリングを持っていく、というほうが近いかな。たとえば、友達どうしでやってる雑談。
友達同士でLINEとかやったりしてるでしょ、それはそれでいいとして、カウンセラーという専門性がある人といろんなところでもコミュニケーションを取ってみたいというのが広まっていくといいなと思います。
こんなに聴いてもらえるんだ、おもしろいんだということが拡散していく。
最近の技術を使って、使用言語のちがう方ともカウンセリングができると、もっとカウンセリングが拡散しますよね。
そういうのができると面白いかなと思います。
――TMSの次のステージについてはいかがでしょう?
私のTMSに期待していることは、日常で起こっていることと心理学とかカウンセリングという形で結びつくというか、貼り付けていくことです。
心理学ではこうするとわかるよ、というような解釈をするとか。あるいはカウンセリングの中に日常性を見るとか。どっちでもいい。
そういう形で進めていくとTMSが発展すると思っています。
それかあと本音ね。
本音を表現しても構わない世の中、その一歩手前がSNSだと思います。
今は割と秘密主義でやってるけど、そのうち秘密をそんなに作らなくてもかまわないという世の中になっていくんだろうなと思っています。
――そんな世の中になったら、楽でしょうね。TMSがカウンセリングの垣根を低く身近にする手伝いというか、一石くらいは投じるところになるといいなと思います。
そのときは、ぜひユーモアも広めて欲しいね。
――承知しました(笑)
最後までお読みいただきありがとうございました。TMS所長の想い、感じていただけましたでしょうか。
私たちの活動に興味をお持ちいただきましたら、SNS相談を是非ご利用ください。
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(10)所長のテクニック:限られた時間でカウンセリングをするヒント
武藤所長のインタビューでは、カウンセラーに向けて、より良いカウンセリングを行うヒントを多くいただきました。その中で、1つだけご紹介します。
カウンセラーを志している皆さん、何か感じることがありましたら私たちと一緒にカウンセリングを学んでみませんか?
――せっかく相談に繋がったのに、50分のSNS相談では物足りないと感じるクライエントさんもいらっしゃいます。所長ならどんな工夫をしますか?
一番有効かなと思うのは、その50分を、振り返ることなんだよ。どのくらい話ができたか聞いてみる。こういうのを、メタ認知的なカウンセリングって言います。
――メタ認知的なカウンセリング、ですか?具体的にどういうものなのでしょう?
メタというのは「高い視点から」という意味。自分が受けたカウンセリングについてどう感じているか、自分自身で振り返って、カウンセラーに向けてフィードバックしてもらうことです。
――物足りないと言われたら、どうしたらいいのでしょう?
もし50点くらいだったと言われたら「あ、そう、あとの50点はなんだったかな?」と聞いてみる。そうやって共有できない題材があったことを確認する。そして、その題材は取り上げないまま終わる。
――不足だ。ということを、ただ共有する。
時間に限界がある場合は有効です。言えないこと、わかってもらえなかったこと、時間が来てしまったから仕方がないなと思ったこと、いっぱいあったでしょうね、と言うだけでも、共感的になる。
次回のカウンセリング予約ができる場合は、今日話し足りなかったことを次回の題材にすることを予告するのも、いい方法だね。
――クライエントやカウンセラーが後で振り返るのではなく、カウンセリングの場の中で一緒に振り返るのですね。
そう。話が終わってどうですか、言い足りないことありましたかね、何か気づいたことありますかね。また相談したいと思いましたか?もういいやって思いましたか?って。私としては聴きにくいんですけど‥‥と前置きしたり。最後の一言を付け加えられたら、ユーモアですよね。
――私だったら、あなたのカウンセリングは50点でしたなんて言われたら傷つくから聞けないと思いますが、「ちょっと聴くの怖いですけど」とつけたら、言えるかも。
そう、やると身に付く。やってみて。
2020年6月14日
広報スタッフA
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日経新聞のテレワーク写真取材を受けました
先日の電話取材に続き、カウンセラーが自宅でSNS相談を行っている様子の写真取材を受けました。
協力したいと手を挙げてくれたカウンセラーにお話をお聴きしました。
——在宅SNS相談の写真取材に手を挙げられた経緯を教えてください。
新型コロナがなければ、ここまで実現される事もなかっただろうテレワーク。
こうして自宅からでも心理相談・支援ができることが少しでも広まってくれたらと思い、手を挙げました。
——在宅SNS相談の一番のメリットは何だと思いますか?
悪天候、非常時のように相談者さんが支援を必要とする時に支援できる事だと思います。
――自宅取材を受けてみて、カウンセラーの個人情報に配慮してくれたなと感じた点はありますか?
記者の方が、スマホで撮った写真をその場で見せて確認を取って下さったことです。
自分は相談対応中でしたので、ざっくり確認しました。同席された新行内さんがもう少ししっかり確認してくださっていたと思います。
――自宅訪問を受けてみて、想像と違ったところがあったら教えてください
そうですね…コロナ自粛直後で、暑い日中に車でなく電車でいらしたことに驚きました。
ただでさえ夏日で、マスクをつける事でさらに暑く…来訪された当初は暑さで顔が真っ赤でした。
ZOOM取材も増えるなか、それでもこうして現場を大切に考える記者さんもいることを実感しました。
――テレワークの取材を受けた感想を教えてください
私にとって、テレワークはコロナの前から身近な風景でした。
私の父は自宅で仕事することが多かったですし、 私自身もここ10年、自宅や外出先でも書類作成・メールや電話での対応を多用してきました。
記事や写真を通じてテレワークの認識が広まり、コロナ前よりも一層の活用・発展につながることを願っています。
貴重な機会を頂きありがとうございました。
広報スタッフA
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新行内カウンセリングセンター長が日経新聞の取材を受けました
こんにちは。
東京メンタルヘルス・スクエアの広報スタッフAです。
新行内カウンセリングセンター長に、日経新聞の取材について感想をお聴きしました。
SNS相談を通じて『一つでも多く何かを残したい』と願い走り続ける新行内の想い、ご一読ください。
——日経新聞さんからの取材は、いつ頃決まったのですか?
6/4に連絡があって、6/5に取材を受けました。
——スピード感のある申し込みですね。
30分程度の電話取材でしたから。
アポイントを取って取材というのではなく、電話で今すぐ話が聞きたい、という感じでした。
――取材申し込みをいただいて、どう思いましたか?
マスメディアを通じて私たちの活動を広く社会に知ってもらう機会は、とても貴重だと考えています。
困難や悩みを抱えた人に知ってもらい、克服していくきっかけになれれば、これ以上のことはないと考えています。
そのために、取材には最大限協力していきたいと考えています。
――SNS相談という方法があること、必要な人に届いて欲しいという思いですね。
取材を受けるときは、私たちの活動が正確に広まっていくように、正しい情報を伝えてきたいと思っています。
そのための資料準備に1日お時間を頂き、翌日にお話しました。
――取材はどのような雰囲気でしたか?
記者さんの質問に答える形で進みました。取材は会わずに済む電話形式でしたが、可能なら在宅相談中カウンセラーの写真を撮りたいと要望され、写真で伝えたいという思いを感じました。記事だけよりも、写真があった方がリアルに感じられるからだと思います。
――カウンセラーの自宅を撮影するのは、ハードルの高い依頼だと思います。
ここが取材を受ける難しさですが、正確・リアルに伝えることと、相談のプライバシーを守ることは同じくらい重要です。相談内容だけでなくカウンセラーの個人情報の保護も含まれます。テレワーク中の写真撮影に協力できるカウンセラーを社内で募ったところ、予想に反して複数のカウンセラーより協力したいという声をいただきました。
私たちはプライバシー厳守のため、取材時に相談画面を撮影することを禁止としています。カウンセラーの個人情報も守りながら、テレワークの現場がリアルに伝わる記事ができることを楽しみにしています。
――記者さんから、興味深い質問はありましたか?
カウンセラーの健康を守るためにどのような対策を取られているのかという質問がありました。
組織で働く人を読者に多く持つ、日経新聞さんらしい視点の質問だなと思いました。
特に、他の相談窓口が中断・縮小しているなかで、東京メンタルヘルス・スクエアはどのように相談を継続しているのか?ということに関心があるように感じました。
――相談体制にフォーカスされるのは珍しいですね。
これまでは、コロナでどのような相談が増えましたか?といった取材が多くありましたが、こういった取材は初めてで、貴重に感じました。
というのは、大変な思いをする方が多くいる危機的状況下だからこそ、決してSNS相談は中断してはならないと切実な想いを持って、継続するために最大限に努力を重ねてきたからです。
――他の電話相談やSNS相談窓口には、相談を中断、短縮しているところもありました。
相談員の安全や社会の要請を考え、歯がゆい思いをしながら中断・短縮せざるを得なかった機関も多くあったと思います。
実際に、他の機関が休止していた4月―5月、こころのほっとチャットの相談件数はこれまでで最も多い数となりました。
――相談内容については、どのような事例を紹介されましたか?
経済的な相談、勤労者に関する相談を中心に紹介しました。
仕事がなくなった、減った、というコロナが直接影響する相談だけでなく、外出自粛中の家庭という密閉空間で「コロナで仕事がうまく行かない」「株で損をした」等のストレスが加わって問題が起きるといった、コロナが間接的に影響する相談も紹介しました。
――組織で働く皆さんも、コロナへの対応に試行錯誤していると思います。
組織に関する相談事例として、新入社員が入社した途端にテレワークになって不安に思っている事例も紹介しました。
モチベーションが保てず仕事を辞めて田舎に帰りたいけど、色々な事情で帰れない。そういう苦しさ、大変さもありますよね、という話をしました。
――今回の取材で1番話したかったことは何でしたか?
相談を継続するため、私たちが行っていることを知ってほしいと思って話しました。
テレワークを実現するためのプロジェクトを立ち上げ、課題を洗い出し、対策を決めて実践し、カウンセラーとスタッフが協力し合って相談を継続することができました。
多くのトラブルに遭いながらもテレワークも活用しSNS相談を継続したことをお伝えできていたらいいなと思います。
実際にテレワークを2か月運用してみて、新たな課題も出てきています。これらについても引き続き対策を検討しています。
――今後のSNS相談について、今の新行内さんが思っていることを教えてください。
コロナに関する相談、特にコロナが引き金になって起きる家庭や職場、人間関係の悩みは続くでしょう。
メディアを通じてSNS相談を知ってもらいたい。
人に会い辛い状況でも悩みを話せる場として使ってほしい。
そのためにSNS相談を継続していきたいと思っています。
ただ、私自身は常に不安を感じています。何が不安かというと、SNS相談がいつまで続くか、ということです。
――直接会って話し辛い今だからこそSNS相談が必要とされているように思いますが、それでも不安を感じますか?
2018年にSNS相談を開始した当初には想像できなかったほど、SNS相談は必要とされています。
しかしカウンセリングの主な手法は、やはり対面相談でしょう。SNSが補助的な相談手段とは必ずしも思っていませんが、多くの人にとってSNS相談は「不完全な」相談手段です。
ですから、いつかなくなるのではないか、と不安を抱えています。
――SNS相談の立ち上げから中心となって関わってきた新行内さんならではの、不安と願いですね。
現在、当団体でSNS相談に関わっているカウンセラーは、関係機関である東京メンタルヘルス(株)のカウンセラーも合わせると150名近くにのぼる大所帯です。
私一人では何もできません。
スタッフやカウンセラーたちと協力して、何かを残していきたい、一つでも多くの何かを残していきたい。
そんなことを考えながら、走り続けています。
広報スタッフA
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SNS相談(8) TMSカウンセラーのみなさんへ 面倒なことをしよう
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(8)TMSカウンセラーのみなさんへ 面倒なことをしよう
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第8回はSNSカウセリングに関わるTMSカウンセラーに期待することです。
――カウンセラーの中で、まだSNS相談に参加していない方へのメッセージをお願いします。
緊張と不安、そういうのも出てくると思うんですよね。
パソコンの使い方、ソフトウエアのトラブル。そういうのを不得意にしている人もいると思う。
カウンセリングの内容についても、文字だけのやり取りに不安だったり緊張したりすることも多々あると思う。
でも、それは仲間に聴きながらやれることなんです。
仲間に「聴く」のがちょっと面倒だっていう場合もあるよね。
面倒の中身は何かっていうと「自分には能力がある」とか「こんなことをやれて当たり前」とか、そういう評価だと思うんだ。
そういうのが心のどっかにあると、聴けなくなる。それを今の言葉でいうと「面倒」と表現しますね。
――それを面倒というのですね!
そう。たとえば、「結婚が面倒」とかね。
――面倒という言葉は「やりたいのに、踏み出せない」気持ちを表現する言葉にもなるんですね。
新しいことをはじめるとき、そういうことが起こると思います。まずは、起こっていることを認め、自覚することが大切です。
それを自覚できると、結構他人に不明点を質問することができたりする。
聴くときには枕詞をつけるのがいい。「ごめんねー、仕事中に」と片目をつぶってみたり。枕言葉を使う練習にもなる。
で、質問された人も、各自分かる範囲でサポートができるとありがたいね。
チームワークがあると素晴らしい。
――そうですね。今でも多くの人たちが、お互いにわからないこと、知らないことを教えあっていると思います。
カウンセラーの皆さんには、お互いに批判や非難的な反応はなるだけしない、というのはお願いしたいね。
ああ、TMSに来てよかった、聴いてよかったと思えるように。聴かれた方はストレスになるかもしれないよ。
芸なんて言っていられないかもしれない。
そういうストレスに耐えることが芸なんだよ、質問を受けることであなただって成長したでしょ‥なんていう人もいるけどストレスはストレスだよね。
――私たちはカウンセラーですから。ストレスをうまく消化して信頼関係を獲得するのも大切な能力の一つだと思います。
(この項、続きます)
2020年5月5日
広報スタッフA
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新型コロナに関する相談が増加しています
新型コロナに関する相談が増加しています
「新型コロナの関係で子どもたちが自宅にいる時間が増えたことで、虐待も増えているようなことは無いか?」
「新型コロナウイルスによる相談が増えているか? またどのような内容の相談が来ているか?」
立て続けに、NHKの報道関係の方より、上記の質問が来ました。
そこで実際に、SNS相談を行っているカウンセラーにそのことを確認してみました。すると、カウンセラーより、たしかにそのような相談があったと顕著にあがってきました。
*以下、事例などは、実際の相談内容を元にしていますが、プライバシーの特定ができないように変更を加えている架空事例です。
◆元教員から、虐待かもしれない
元教員の方から、ストレスと自責の念にかられて相談が来ました。
【元教員】
「学校が休みなので、子どもといる時間が長くなり、きつく叱ってしまう、虐待かと(思ったり)。私は子どもが好きで教員の仕事をしていたのに、そんな自分が許せないし、今後どうなってしまうのかわからなくて怖いし不安」
外出自粛ともなれば、室内に閉じ込められたようになり、窮屈さや不自由さを感じることも多いことでしょう。
まじめな方であったり、心配が強い方ほど、そういった状況に追い込まれ、ストレスが増幅することが懸念されます。
ストレスが増幅し、狭い空間で家族と接することが多ければ、ちょっとしたことや今まで気にもならなかったことが、かんに触り、身近な存在である家族に怒りやストレスの吐き出しが向かってしまうことも危惧されます。
◆自傷
3月中旬のある日、カウンセラーが相談に入ると、自傷の相談が立て続けに入ったことがありました。
【カウンセラー】
「(先日相談に入った際)、ほぼ中学生の自傷の相談で、いままでこんなに(自傷の相談が)集中したことはなかったので、かなり危機感を持ちました。」
新型コロナで外出できず、閉じ込められたようになった子どもたちの姿が浮かびあがってきます。逃げ場のない子どもたちのストレスの矛先が自らに向かってしまっているのかもしれません。
◆不定期の仕事がなくなって
新型コロナの影響は親や子だけではなく、不定期の仕事をしている方たちにも影を及ぼしています。不定期の仕事がなくなってしまい、家族にあたってしまう、といった相談もありました。
◆感染経路はわかっているのに言えない不安やイライラ
一方で、このような相談もありました。
【とある既婚男性】
「浮気したり、風俗に通ったりしていて発症する可能性もあるが、そんなことを家族はじめ職場や専門家などにも言えず、不安やイライラを持ってしまい、ついつい家族を怒鳴ってしまう」
◆NHKからの質問
さらにNHKの方からは、
「この間相談は増えていますか?」
「そういったことに対して何かいい対策はないでしょうか?」
といった質問もありました。
相談数については確実に増えています。
SNS相談はもちろん増えてきています、なぜなら外出せずに、室内からでも、誰にも知られずに相談ができるからです。電話相談も増えていますが、家庭の状況によっては、家から電話で相談することが難しい場合もあります。
一方、対面での相談については、外出して相談に来るというハードルが非常に高くなってしまっています。
このため、東京メンタルヘルス・スクエアでは、カウンセラーの健康面への配慮を最大限に行いつつ、こういった状況であっても、SNS相談での支援を途切れることなく提供できるように、相談のプライバシーが確実に守られるテレワークの実施も視野にSNS相談に継続して取り組んでいるところです。
2020年4月11日
NPO東京メンタルヘルス・スクエア カウンセリングセンター長 新行内勝善
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SNS相談(7) SNS相談の醍醐味「共感する快感」
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(7)SNS相談の醍醐味「共感する快感」
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第7回はSNS相談の醍醐味「共感する快感」についてです。
――カウンセラーがクライエントさんの言葉を聞いて感動することがあります。これってカウンセラーとして良いことだと思いますか?
カウンセラーがクライエントさんに心を重ねると感動したり悲しくなったり、心が動くことがありますね。素晴らしいことです。こういうことを皆さん「共感」と呼んでいるけれど、私は「快感」だと思う。
――快感、ですか。それは、カウンセラーの快感ですか?クライエントの快感ですか?
もちろんクライエントにも解放感、リリース感はあるかもしれない。自ら言えた時というのは、やっぱり快感があるはずです。カウンセラーにとっても、クライエントに心を動かされるのは快感だと私は思います。
――なるほど、私はカウンセリングをしながら、「共感してるなー」「カウンセラーらしいことをしてるなー」と思っていたけれど、それは私の快感だと(笑)
そう、快感。
――そういわれると、ものすごく身に沁みます(笑)
不思議なのはさ、わっはっはって笑ってるカウンセラーがいないこと。ほんとは笑える話いっぱいあるはずなんだけど。たまには泣いてる人もいるよね。本人が目の前にいないからこちらの感情も隠さなくてもいい。そういうことができるのは、SNSの特徴的なところ。隠していたところね、開放する。その解放感と、それを聴く快感。
――もう一回整理すると、隠していたことをお披露目した時に、クライエントが得られるのは、解放感。
聴いたカウンセラーが得られるのは、快感。
そう。ありそうでしょう?聴けてよかったな、言ってくれてよかったなと思うこと。
――はい、とっても心当たりあります。
それくらいカウンセラーにもメリットがなければ、SNS相談なんて大変でしょう?肩は痛くなる、目は疲れる、手は動かさなきゃいけない‥。
――そうですね。対面の面談では、本人は隠しているつもりでも表情に出たりしてしまうから。
読まれちゃうっていうのはあるよね、面談形式のカウンセリングは。読まれたくなかったのに。
――自分で開放するんじゃなくて。
力のあるカウンセラーは読んでも読まないふりをしたりします。それがポーカーフェイスです。これもひとつ大事なスキルですよね。自分が提供していない情報を読まれて、解釈されて、こうでしょああでしょって言われるのは一番苦痛だと思います。そういう意味で、隠せる媒体であるSNSはいいよね。
――SNSではクライエントの本当に言いたいこと、読み切れないことも多くあります。
ちょっと今まで私が感じているのは、同情的なカウンセラーが結構いらっしゃる。悪くはないけど良くもないと思います。
「辛かったわね」「それは大変だったね」「あーそうだったの、それはどうして?」「キツかったわね……」そんな話をして時間になったら「時間になっちゃった」「ごめんね」と終わるカウンセリング。
それではお披露目できない。それよりは、「あー、つらかったね、その時どうやって耐えたの?」「どんなこと考えた?」「なんか仕返ししようと思った?どうやって仕返ししようと思ったの?教えて?」って、学ぶ姿勢のほうが、面白い。
――それがあると、こっちも面白いし、向こうも開放できたと感じられそうです。
カウンセラーにもいろいろな考え方があって、何が正解ということはないのですが私はそういう姿勢がいいと思ってやってます。そうやって、もう一歩聞いたほうが、面白いから。自分が。
――カウンセラーも自分が快く感じるような関わり方をするほうが上手く行く、という考え方ですね。
そう、快感を追求するの。これ、是非カウンセラーのみんなに伝えてね(笑)
(この項、続きます)
2020年3月10日
広報スタッフA
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SNS相談 (6) SNS失敗談 二人三脚
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(6)SNS失敗談 二人三脚
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第6回は「SNS失敗談 二人三脚」についてです。
――SNS相談でこれは失敗だったなと思う事はありますか?
これはいいと思ってやったことが大変なミスで、事務局のほうまでクレームが来たことがあります。
あるカウンセラーが対応している途中でカウンセラーから相談を受けて、一緒にカウンセリングに入った時、私が行った言葉をカウンセラーがそのまま打ってくれた。
そうしたら話す口調が急に変わってしまって、クライアントさんには合わなくなってしまったようです。
カウンセラーの対応を邪魔する結果になってしまった。
カウンセラーにも本当は少し抵抗があったのだと思うけど、私がそれに気がつけなかったということがあって、クライエントにもカウンセラーにも大変申し訳なかったなと思いました。
――カウンセラーが所長に意思表示をうまくできなかったパターンですね。
私がカウンセラーに伝えたことを参考に本人の言葉で書いてもらえばよかったんだけど、私がアドバイスしたことをそのまま採用していただいたわけ。
それが大変なミスにつながってしまったんです。
――カウンセラーは対応について相談したくて所長にアドバイスを求めたんだと思うのですけど、それが裏目に出てしまった。
複数のカウンセラーで対応するのは二人三脚に似てるところがある。
歩調を合わせてやっていけばすごく良い対応ができるのだけど、どっちか遠慮したり引っ張ったり、ずれてしまうと、うまくいかない。
逆にアドバイザーとカウンセラーの意見が違って、ケンカしてしまう場合もあるでしょう。
―SNS以外のカウンセリングだと、たとえ意見のが食い違ってもクライエントのいないところでやるから、クライエントさんへの対応が途中で変わるということは起きないですから、SNS相談ならではのトラブルですね。
本当は、クライエントに来てもらって、カウンセラーとアドバイザーがそのクライエントについて話し合っているのを見ていただくのって、ひとつのカウンセリング方法として効果があると思います。
だからSNSで、そういうことをたまにはやってもいんじゃないかと思います。
――面白そうですね。そういうことが出来るタイミングがあったら、是非やってみたいです
(この項、続きます)
2020年2月5日
広報スタッフA
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SNS相談 (5) SNS相談の醍醐味(1)リリースする快感
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(5)SNS相談の醍醐味(1)リリースする快感
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第5回はSNS相談の醍醐味「リリースする快感」についてです。
―――SNS相談の醍醐味は、何だと思いますか?
そうだね、やっぱりこれはと思うのは、隠し事を表現してくれたとき。
――隠し事、ですか。具体的に言うと?
金を隠しているとか、家族に内緒の賭け事をしているとか、今の夫は31番目に好きだった人とかね
――31番目に好きな人……ずいぶん繰り上がって結婚されたのですね(笑)隠し事を表現することが、どうして醍醐味になるのでしょう?
そういう話が出ると、カウンセラー側もウキウキしてきて、もう少し聞きたいなとか読みたいと感じる。漫画の次のページをめくるような感じ。
――たしかに、SNS相談していると次の展開が楽しみになること、経験あります。
漫画は、ページの末尾に期待させるようなものをギューッと詰め込んで、次のページで展開するという演出をやっていますよね。
それと同じように次のメッセージがどんなメッセージかということをカウンセラーのみなさんは期待と不安を持って見ていると思います。
そこにSNSの特性、特徴があります。
次の言葉を待つインターバル。
クライエントも書くか書かないか迷って、送信前に書いたり消したりして、ついには送信ボタンを押すわけです。
――言葉による会話だったら、ポロっと言ってしまうこともあるし一度言ったら取り消せないけど、SNSでやり取りしている中で、満を持して発言した言葉を「ここで来たか!」という気持ちで受け取るインターバルですね
そう、ここで来たか、ここで本音が出てきたか、という衝撃。
クライエントが自分のことを、性のこと、愛のことをしゃべりだす瞬間がある。これはSNSの特徴でしょう
――それは対面の相談、電話相談ではあまり出にくいのでしょうか?
SNSは、隠せる媒体です。電話と比べても、声を使っていないぶんだけ匿名性が高いですよね。
一番匿名性がないのは面談。伝統的なカウンセラーたちはこれは正式なカウンセリングだという。
表情、態度、距離、声の質、そういう非言語の情報から見立てるのが正式なカウンセリングだと言うから。
SNSは、ガラガラ声でも隠して話すことができる。
自分にコンプレックスが強く、それを気にして話せない人にとって、隠せる媒体というのは有利に働くことがあります。
その点に関しては、対面カウンセリングはSNSには勝てないと思う。
――自分の隠したいこと、隠さなきゃいけないことに劣等感を持たずに相談ができる。
そうです。安心して話すことができるんです。そして何より面白いのは、隠して隠していたのをばらす時だよね。そこに快感があるわけです。
――せっかく隠してたのに、ばらしてしまうのですか?
そう。隠していたことを、自らお披露目するところに、快感がある。暴かれることなく、ね。
だからクライエントは隠したいことがいっぱいあったほうがいいわけよ。リリース感が強まるでしょ。たくさん味わえる。
そこはSNSの優れたところでしょう。
(この項、続きます)
2020年1月20日
広報スタッフA
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ジャーナリスト渋井哲也氏を招き『ネットと自殺』に関する社内研修を行いました
『ネットと自殺』に関する社内研修を行ないました

本ブログ記事執筆した当NPOカウンセリングセンター長:新行内(右)
SNS相談は面接、電話、Eメールに次ぐ、新たな相談手段。特に若者や子どもたちにとっては、気軽に利用しやすい相談手段となっています。
そしてそれは新たな試みであるがゆえに、カウンセラーにとっての新たなチャレンジといってもいいでしょう。
このため、SNS相談においてさらに効果的な支援ができるカウンセラーにスキルアップするための研修は、これまでと趣向を変えることも必要です。
そこで今回は、これまでとは趣向を変え研修を行ってみました。
研修のテーマは「ネットと自殺」。
講師は、これまでのようなカウンセラーや対人援助の専門家ではなく、ライター/ジャーナリストの渋井哲也氏をお招きしました。(2019年12月14日(土)研修実施)
1.ネット、いまのエッジは?
実はこの研修ではカウンセラーの面々は、冒頭から、意表をつかれたようになってしまいました。
渋井哲也氏「LINE相談をやってるんですよね、オープンチャット(*)って知っていますか?」
カウンセラー「???」
渋井氏「え? 知らないの誰も?」
LINE相談をやっていながら、カウンセラーのほとんどはオープンチャットというものを知りませんでした。
そのような私たちに、渋井氏はオープンチャットがなんたるかを、手をとるように教えてくださいました。
渋井氏「オープンチャットに参加すると、いまの若者の日常の声が見れます」
いまの若者が常日頃どのようにSNSを使っているのか、そのエッジの一つを学ぶことができました。
ほかにも、こんなこともありました。
渋井氏「SNSのピクシブくらいは見ておいた方がいいですよ」
カウンセラー「??? ピクシブ? 知らない、、、それは写真? プリンター?」
さすがにジャーナリストの渋井氏、いまの最先端、エッジの部分をこともなげに私たちに教えてくださいました。
*LINEのオープンチャットとは、2019年8月よりLINEに追加された3つ目となる新トーク機能。友だち登録した人との「トーク」、友だち登録した人たち同士の「グループ」に加え、友だち登録していない人とも自由に自分の名前を設定したプロフィールで交流できるグループとしてスタートしたのが「オープンチャット」である。
2.自殺についての深遠なる洞察力
今回渋井氏より学ぶことができたのは、そういったエッジだけではありません、学問的なところでもまた学ぶことができました。
そのひとつは、自殺が関わる裁判の中で、資料として多用されているというシュナイドマンの『自殺とは何か?』(誠信書房,1993年)という文献からでした。
シュナイドマンは、著書で以下のように述べているそうです。
●自殺の共通の動機は、耐えがたい心の痛み
●自殺における共通の悩みは、心の願いがかなわぬこと
●自殺の共通の目的は、直面する難問を解決すること
●自殺に共通してみられる感情は、望みも、救いもないという思い
●自殺者に共通にみられる心は、揺れる心
●自殺者にみられる認識の特徴は視野の狭窄
●自殺者にみられる特徴的な対人行為は、死ぬことの予告である
●自殺によくみられる行為は「逃亡」
SNS相談の中で、「死にたい」という声をたくさんお聴きしていますが、相談を振り返ってみても、シュナイドマンのこれらの言葉には「たしかに」と納得できる奥深さがたくさん凝縮されていると思いました。
3.移り変わるものと、変えてはいけない大事なものと
もっと多く我々カウンセラーが学びとったところ(共感性羞恥、インターネットの「第3空間」化、「逸脱」行動をどう見るか?、過剰適応、…etc.)をお伝えしたいところですが、ブログですのでここまでとします。
さらにという方は、例えば渋井哲也氏の各著作を参照していただくとよいかと思います。
例えば渋井氏の最新著作を下記にご紹介しておきます。
渋井哲也『ルポ 平成ネット犯罪』ちくま新書、2019年
◆
元号の変わり目は、なぜか時代の変わり目でもあると言われます。
渋井氏の最新著作のタイトルは、「平成」ネット犯罪ですが、はたして「令和」となり、ネットの世界はどのような変化を見せていくのでしょうか?
時代は変わり、相談手段も移り変わり、しかしながら、かといって、カウンセラーが大事にすること自体は変わることはないと考えています。
我々カウンセラーは、相談手段がいずれであれ、相談者の心の中のさまざまな思いをしっかりと聴かせていただく、そういった営みは今後も変わることはないでしょう。
2020年1月16日
特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア
カウンセリングセンター長 新行内 勝善
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