ジャーナリスト渋井哲也氏を招き『ネットと自殺』に関する社内研修を行いました
『ネットと自殺』に関する社内研修を行ないました

本ブログ記事執筆した当NPOカウンセリングセンター長:新行内(右)
SNS相談は面接、電話、Eメールに次ぐ、新たな相談手段。特に若者や子どもたちにとっては、気軽に利用しやすい相談手段となっています。
そしてそれは新たな試みであるがゆえに、カウンセラーにとっての新たなチャレンジといってもいいでしょう。
このため、SNS相談においてさらに効果的な支援ができるカウンセラーにスキルアップするための研修は、これまでと趣向を変えることも必要です。
そこで今回は、これまでとは趣向を変え研修を行ってみました。
研修のテーマは「ネットと自殺」。
講師は、これまでのようなカウンセラーや対人援助の専門家ではなく、ライター/ジャーナリストの渋井哲也氏をお招きしました。(2019年12月14日(土)研修実施)
1.ネット、いまのエッジは?
実はこの研修ではカウンセラーの面々は、冒頭から、意表をつかれたようになってしまいました。
渋井哲也氏「LINE相談をやってるんですよね、オープンチャット(*)って知っていますか?」
カウンセラー「???」
渋井氏「え? 知らないの誰も?」
LINE相談をやっていながら、カウンセラーのほとんどはオープンチャットというものを知りませんでした。
そのような私たちに、渋井氏はオープンチャットがなんたるかを、手をとるように教えてくださいました。
渋井氏「オープンチャットに参加すると、いまの若者の日常の声が見れます」
いまの若者が常日頃どのようにSNSを使っているのか、そのエッジの一つを学ぶことができました。
ほかにも、こんなこともありました。
渋井氏「SNSのピクシブくらいは見ておいた方がいいですよ」
カウンセラー「??? ピクシブ? 知らない、、、それは写真? プリンター?」
さすがにジャーナリストの渋井氏、いまの最先端、エッジの部分をこともなげに私たちに教えてくださいました。
*LINEのオープンチャットとは、2019年8月よりLINEに追加された3つ目となる新トーク機能。友だち登録した人との「トーク」、友だち登録した人たち同士の「グループ」に加え、友だち登録していない人とも自由に自分の名前を設定したプロフィールで交流できるグループとしてスタートしたのが「オープンチャット」である。
2.自殺についての深遠なる洞察力
今回渋井氏より学ぶことができたのは、そういったエッジだけではありません、学問的なところでもまた学ぶことができました。
そのひとつは、自殺が関わる裁判の中で、資料として多用されているというシュナイドマンの『自殺とは何か?』(誠信書房,1993年)という文献からでした。
シュナイドマンは、著書で以下のように述べているそうです。
●自殺の共通の動機は、耐えがたい心の痛み
●自殺における共通の悩みは、心の願いがかなわぬこと
●自殺の共通の目的は、直面する難問を解決すること
●自殺に共通してみられる感情は、望みも、救いもないという思い
●自殺者に共通にみられる心は、揺れる心
●自殺者にみられる認識の特徴は視野の狭窄
●自殺者にみられる特徴的な対人行為は、死ぬことの予告である
●自殺によくみられる行為は「逃亡」
SNS相談の中で、「死にたい」という声をたくさんお聴きしていますが、相談を振り返ってみても、シュナイドマンのこれらの言葉には「たしかに」と納得できる奥深さがたくさん凝縮されていると思いました。
3.移り変わるものと、変えてはいけない大事なものと
もっと多く我々カウンセラーが学びとったところ(共感性羞恥、インターネットの「第3空間」化、「逸脱」行動をどう見るか?、過剰適応、…etc.)をお伝えしたいところですが、ブログですのでここまでとします。
さらにという方は、例えば渋井哲也氏の各著作を参照していただくとよいかと思います。
例えば渋井氏の最新著作を下記にご紹介しておきます。
渋井哲也『ルポ 平成ネット犯罪』ちくま新書、2019年
◆
元号の変わり目は、なぜか時代の変わり目でもあると言われます。
渋井氏の最新著作のタイトルは、「平成」ネット犯罪ですが、はたして「令和」となり、ネットの世界はどのような変化を見せていくのでしょうか?
時代は変わり、相談手段も移り変わり、しかしながら、かといって、カウンセラーが大事にすること自体は変わることはないと考えています。
我々カウンセラーは、相談手段がいずれであれ、相談者の心の中のさまざまな思いをしっかりと聴かせていただく、そういった営みは今後も変わることはないでしょう。
2020年1月16日
特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア
カウンセリングセンター長 新行内 勝善
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SNS相談 (4) 人間関係のヒント
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(4)人間関係のヒント
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第4回は少しSNSから離れて、人間関係のヒントになるかもしれないお話です。
―――ユーモアがデトックスの効果を持っていることはわかりました。でも衝突って、とてもユーモアなんて雰囲気じゃない、呼気どころか息もひそめてしまうような緊張した雰囲気の中で発生しているように思います。そんな風に衝突している人たちがいるとき、所長ならどうします?
逆説的な言葉が、ユーモアになるね。一触即発の雰囲気の時だよね?たとえば「あー、これは止められないぞー」とか声を出すかな。
――そういう言葉でその人たちの関係に入っていく。
逆説とは真理なんだよ。「急がばまわれ」「負けるが勝ち」とか言うようにね。衝突している二人の前で、そのうち片方に向かって「やー、〇〇さん、喧嘩始まっちゃったんだけど、負けてくれない?」と言ってみる。そう言うと、どっちが勝つかわからないけど、止む。
――面と向かってそう言われたら、その言葉になんらかの反応をせざるを得ないですね。そのひとことは所長のユーモア力というか。そこで、それを言えるのは所長のセンスだなぁって思います
適切なタイミングは大切だね。それと、その気になって言う。本気になって言う。そうしないと馬鹿にされたような感じになっちゃうから。
――もしそれでも関われない人、たとえば、所長の職場で、所長に対して反抗的というか、敵対的、あまりよく思ってなさそうな人が中に入ってきたとしたら、どうします?
勇気を持って声かけするっていう経験があります。最初はエネルギー必要なんだよね。どう言われるかなとか、無視されるんじゃないかとか、ぶん殴られたらどうしようとか思うのははあります。でも、できるだけフラットな気持ちで声をかけます
――マネジメント側である所長が、勇気を持って声かけするんですね。
特にその人がちょっと問題視されている状態されている場合ですね。そういう時は、肩から力を抜いて声をかけます。マネジメント側という態度で接したら、うまく行かない。そして本人だけではなく、周りの人たちの話も聴く必要があります。同じように感じている人、違うように感じている人もいるだろうしね。
――勇気を出して、力を抜くんですね。簡単なようで難しそうです。
そうだね、ほんとは力抜けてないかもしれない。でも、力を抜いたふりをする。ポーカーフェイスも、カウンセラーには大切だからね。
(この項、続きます)
2020年1月14日
広報スタッフA
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SNS相談 (3) ユーモアの力
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(3)ユーモアの力
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第3回は「ユーモアの力」です。
――所長にとってのユーモアというのは、どういうものですか?
あったかいイメージ。それから呼気と関係するもの。
息を吸いながら笑えないでしょう?笑いは全て吐く息なんです。
出すこと。毒を出すこと、デトックスに近い。
笑い声を出させる。出す事は、快適さが伴うね。
あのね、どんな場であろうと、人を一番強力に回復させる力は、ユーモアです。
サポートでも、素晴らしいカウンセリングの理論でも、金でもなく、ユーモアなんです。
――ユーモアも出てこないくらい弱っている人も、いると思います。
自分ではそんな風に考えられなくても、周りの人が言っているユーモアに笑わせられるだけでも、回復する力になりますか?
もちろん。
周りから何か言われて、クスッとわらったり、大笑いしたり。
だからSNS相談ではユーモアを目指す!だから、カウンセラーの先生方、あまり固いこと言わないでくれよって思うことあります。
――思うだけじゃなくて、所長からしっかり言ってください(笑)
職場で笑い声やユーモアがあるのはメンタルヘルスがいい証拠だからね。
先ずは自分の職場からユーモアを生み出さないと。うん、そうだね。
――世間には、ユーモアも雑談もない職場は多いと思います。
ユーモアがないところにユーモアを生み出すにはどうしたらいいでしょう?
それは難しいね。一つは、本音。本音を喋ると、ユーモアになる。あとは失敗談。
例えば、私は尻フェチなんですよ。
私が小学4年生の時、学校の先生に恋をしたんです。
彼女は3年生の担任だったから、用もないのに3年生の教室の前をうろうろしたりして。
ある日ラジオ第二体操をして、ばっと前を見たら先生のお尻があった。
バーン!ってLargeなお尻。Largeなんですよ、Bigじゃなくて。
それからです、フェチになったのは。
これ本音なんです。
これ話すとみんな笑うわけ。そういうのですね、ユーモアは。
実際、今でも私はそういうのを引きずっているんですよ。だから大きいお尻を見るとなんか反応する自分がいる。
ここまで話して「みなさんもないですか?そういうエピソード」と問いかける。
そんな風に、自分の話の中に相手を迎え入れるというか、じゃれついていく。
――それは、自分の中にユーモアになるような本音の引き出しが必要だと思います(笑)
私にはそういう引き出しないなぁ、言えないなって思いました
そう?ユーモア言えない人もユーモアを言ってますよ。
しゃべれないことを上手に表現する方法を探してみるといい。沈黙は金、饒舌は銀。
だから私なんかより、あなたのほうがよほどすごい。
――なるほど、そうやって私のことを会話に迎え入れてくださるわけですね(笑)
もう一つは、歌舞伎の舞台にしてしまうことです。
――え、歌舞伎ってユーモアなんですか?
歌舞伎役者は、本気で、なり切って、見栄を切る。
大衆はそれを見て笑ったり、掛け声をかけたりして呼気を出す。
これもデトックスですね。あれから私はメンタルヘルスを学びました。
歌舞伎役者は「あるく〜」なんて言いながら大袈裟な身振り手振りで歩くでしょ。
道端でやってたら大変だけど、舞台でやると芸になる。現実から少し離れる。
だから、深刻なときにこそ舞台が必要。舞台に乗ると芸になるから。
だからケンカやいじめも、芸になればいい。
そして今日も舞台稽古ありがとうってね、なかなかいい芸ができましたと言えると、いいんだ。
でも、芸にするには誰か演出役が必要だよね。
――そうですよね、彼らは舞台に乗っているつもりはないから。
乗っけちゃわないといけない。どう乗っけるかは、技だよね。
(この項、続きます)
広報スタッフA
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SNS相談 (2) カウンセリングで大切にしているもの
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(2)カウンセリングで大切にしているもの
SNS相談利用者の皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしています。
第2回は「武藤所長がカウンセリングで大切にしているもの」です。
――所長が対面のカウンセリング、SNS相談で大切にしていることを教えてください
対面の面談でも、SNSの面談でも、信頼関係というのが一番重要じゃないでしょうかね。
対面のカウンセリングに来てくれた人には、まずは「この場所は分かりにくくなかったですか」と聞く習慣があります。
よく来ていただきました、あなたを歓迎していますよというメッセージを送っているということですかね。
次に全体の形を大切にします。お姿だけでなく、雰囲気などを含めた、全体の形。そこにどうしても目が行きます。それは対面のカウンセリング独特のものですよね。
さらに対面では、自分も相手に見られているわけです。
お互いに様子をうかがいながら、どういう話をされにきたのかとか聞きます。
はっきり言語化できる人もできない人もいるけれど、言葉以外に表情や態度からも読み取れることがあるから、一回の面談でだいたい見立てられることが多い。
この人が本当に困っていることは何だろう、本当に何とかしたいと思っていることは何だろうと。
なかなか見立てられない時は、私だったらエンプティチェアを使うときがあります。
ひとりロールプレイ、寸劇を通して、その時の気持ちを味わってもらう方法です。
「お母さんともっと話したかったのね、お母さんにわかってもらってもらいたいことがあったんだよね。じゃあせっかくだからお母さんにここに来てもらおうか」って言って、空っぽの椅子を指して「お母さんがきたと想像してみて。見える?見えたらそのお母さんに言いたい事言ってみて」って。
他にもいろんな技術を持っているカウンセラーであれば、ゲシュタルトセラピーとかアサーティブとか認知療法とか精神分析とかね、いろんな技というかスキルを発揮できる。それが対面の面接だと思います。
――SNSでは、そういうことはできませんね。
面談では非言語の情報のやりとりから、信頼関係が築きやすい。全体の形も見えやすい。
一方、SNSは嘘ついてもいいし、隠してもいい。カウンセラーからは全体の形がなかなか見えない。
でも、嘘をつくにはそれなりの理由があるんでしょう。
隠すことにもご本人にとって意味がある。それは隠させたほうがいい。
――隠させてあげられるというのは、あるかもしれないですね。
隠していることも、話してくれたことも、相手を尊重しながら聴くということ。
そういうところから信頼感が生まれると思います。
そして、カウンセリングで大切にしているもの、やっぱりユーモアが一番です。
――ユーモアは、人間関係だけではなく、カウンセリングのキーワードでもあるのですね。
(この項、続きます)
広報スタッフA
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心休まる音楽を届けたい ~Mogami Project~
ご病気の人、落ち込んでいる人、孤独な人などに心休まる音楽をお届けしたい。
~Mogami River Project CDを無料で配布しています~
ソロギタリスト土門秀明氏の制作されたCDを、東京メンタルヘルス・スクエア受付フロアにて配布しております。
心が休まる素敵な音、音楽です。
ご興味のある方はどうぞご自由にお持ちください。
みなさまのこころに花が咲きますように
事務チーム
<土門秀明氏からのメッセージ>
Mogami River Project
これは、例えば、ご病気の人、落ち込んでいる人、孤独な人、何らかの理由で家から出られない人などに、私が演奏したCDを、無料で届けようというプロジェクトです。音源自体は、何の変哲もありません。
私の拙い演奏と最上川の水音、虫の音、鳥の鳴き声、風の音などが入ってる、いたってシンプルなCDです。
制作に至っての経緯は、私の経験に由来してまして、世間には、いろんな理由で、家から、病院から、施設から出られない人達がいます。
そういう人達の一服の清涼剤にでもなればという単純な動機であり、私の自己満足でもあるかもしれません。
あと、最近お蕎麦屋さんでギター演奏をしてるのですが、そこで知り合った不眠症の方が、私のCDを聴きながらだと良く眠れると言ってくださった事もあります。
基本体勢としては、NPO(様々な社会貢献活動を行い、収益を分配することを目的としない団体、事業で得た収益は、様々な社会貢献活動に充てる)になりますが、無料で配布しますので収益は出ません。
しかしながら、制作費、経費は掛かりますので、協力者、後援者は、いてくれると助かります。
「私はこういう事が得意だから、こういう事で協力します」とか、「これ余ってるので使ってください」とか、何でも結構です。
ただし、ビジネス目的、PR目的でしたらご遠慮ください。持ち出し金は出ても、何もリターンはありません。
CDについての感想、評価などは、期待しておりません。私に与えられた音楽スキルが、少しでも世の中のお役に立てれば幸いです。
代表者プロフィール
土門秀明(山形県酒田市出身)
1990年代、バブルガムブラザーズ等のバンドで活躍した後、単身渡英。日本人初の「ロンドン市公認音楽家」となり、2012年まで約10年間地下鉄演奏を敢行。
帰国後、適応障害、鬱病、パニック障害などを発症し、一時は寝たきりとなるが、音楽の力で回復、復活する。
現在は、各症状と向き合いながら、イベント出演やBGM演奏、執筆など多岐に渡って活動中。
公式HP : http://www.domon.co.uk/Site/welcome.html
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SNS相談 (1) 東京メンタルヘルススクエアの特色
東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談
(1)東京メンタルヘルス・スクエアの特徴
SNS相談を利用してみたい方、もう利用されている皆様。
皆様に、SNS相談の向こう側にいる私たちのことを少しでも知ってもらいたくて、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(以下TMS)の創始者であり理事長である武藤清栄所長に「東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談」というテーマでお話をお聞きしました。
これから数回に分けてご紹介します。
第一回は「東京メンタルヘルス・スクエアの特徴について」です。
――東京メンタルヘルス・スクエアの他にはない特色は何だと思いますか?
私はね、「お話しパートナー」という言葉がすごく好きなんです。
自分のところなのに、他人事のように好きですね。カウンセリングというよりも、お話しパートナーのほうが気軽な感じ…社会学的な言葉を使うと「大衆化されている」感じがして。
――大衆化されている?
いろんな人たちが気軽にお話ししようって来られる。「カウンセリングを受けよう」というのではなく。
――クライエントにとっても、カウンセラーにとっても敷居が少し下がっている感じでしょうか
そう。「パートナー」という感じが、TMSの特徴的なところだと思います。そういうところを伸ばしていきたいと思いますね。
カウンセラーが一方的に援助しようと思ったら、身が持たないと思うんです。疲れちゃって。義理と人情でやっていくのも悪くないんだけど、長くは続けられない。
――クライエントを援助するために、クライアントにも半分は助けてもらうということでしょうか。
そう。カウンセラーの観点でクライエントを解釈するのではなくて、クライエントと一緒に掘っていく。どんな心の世界があるのか聞かせてもらう。
――カウンセラーが答えを作ろう、与えようと思うと、疲れてしまうし、無理なことも多いから、あるものを掘り出していく。そんな感じ。
例えば自分の思いを言えなかったと後悔しているクライエントさんに
「なんで言わなかったの?」
と聞くのは普通のコミュニケーションなんですけど、
「何か言えない理由があったの?」
「その時どんなこと考えたの?」
と言うと、クライエントさんと同じ場所から、一緒に掘っていくことができる。そういうところでも、やっぱりパートナー的なところ、相手の目線に立って、というのは根底にあるのだと思います。
――実際に、今活動されているTMSのカウンセラーを所長が見ていて、パートナーとして活動されている感じ、します?
そういうのが堂々と表現されていない感じはする。なぜかと言うと、不思議だなって思うんだけど、このオフィスには「東京メンタルヘルス株式会社」という看板が掲げてあって「東京メンタルヘルス・スクエア」って看板は少ししかない。私たちはお話パートナーになるためにオフィスに来ているのに、私たち自身の居場所は、どこにあるんだろう?
みんなこのオフィスに来て、椅子とか席を「借りている」みたいな意識があるんじゃないかなという気がする。
(編集者注:TMSは東京メンタルヘルス株式会社オフィスの一部を借りて活動しています)
――そういう意識、確かにあります。
あるでしょ?だからそのあたりを、もう少しOPENにして、ここは共用、ここは占有、何時から何時まではスクエアと、男風呂女風呂のような、分け合ったり交互に使う感じがあってもいいかなと思うんだよね。そうするとお話パートナーっていうのももっと堂々と表現できるかなって感じがちょいとしていて。
――そうですね。
TMSの理事たちは何を考えているのだろうね。理事長をはじめ・・
――そこは理事長からパシっと言ってもらうとよろしいかと(笑)
本来、TMSが生まれたいきさつは、東京メンタルヘルス株式会社(以下TMA)と比べて小回りが利く団体として設立したNPO法人です。カウンセリングを日常的なものにするとか、お話パートナーとか、仲間づくりとか、TMAができないようなことをやるために。
――TMSとTMAの役割分担ということでしょうか?
固い言葉で言えばそういう言葉なんだけど、パートナーかもしれないね、TMSとTMAも。
――パートナーとしては、かみ合ってないかもしれないですね。
その点、TMA、TMS両カウンセラーが参加するSNS相談は、コラボレーションだよね。違う所属の人たちが集まって、誰がどこの出身とか知らない人も、同じプロジェクトに取り組んでいる。私たちにとってもSNSはいい試みですね。
ケンカも起こったり、うまくいかないこともあったりするんだけど、それは、まあ、しょうがない。あなた方カウンセラーでしょって言われても、しょうがない。
――そうなんですよ!「あなた方、カウンセラーでしょ?!」って思うような出来事、いっぱいあるんです(笑)
もうね、カウンセラーも分かっていてもやめられないんだ、人間だものね。洗練されていないところもある。それも含めて、SNSの醍醐味だと思います。そういうところで、カウンセラーにもユーモアがあるといいね。
(この項、続きます)
広報スタッフA
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コミュニケーションって何だろう
こんにちは。
東京メンタルヘルス・スクエア 吃音チームです。
日々話すことを求められる私達ではありますが、コミュニケーションってなんだろうと思うことがあります。
吃音を持ったある彼とはじめてお会いした時、一つの言葉がでてくるまでに、少し時間が必要でした。
それでも、一生懸命伝えようとする気持ちが伝わってきたので、彼の言葉が出てくるまで一緒にそこで待つという時間を何回か過ごしました。
彼の伝えたいことを受け取りたいと思ったからです。
ある日は、他愛もない話をぽつぽつと、
ある日は、ほとんど言葉が出ずに時間になることもありました。
またある日は、自分のことを知ってもらいたいと、何十枚もの紙にまとめてきてくれた彼の人生を一緒に読みました。
そんな時間を重ねて10回目くらいになったとき、いつの間にか言葉がたくさん出てきていることに気づきました。
日を重ねるほどに、彼の言葉は今湧いたばかりの泉のように、止まらないくらいの勢いになっていきました。
なぜなのかなんて、わかりません。
ただ、『伝えたいという気持ち』
それは、どの時も感じていたように思います。
言葉は私たちに与えられた伝える手段のひとつではあるけれど、言葉よりももっと、伝わるものがもしかしてあるのかも…
コミュニケーションは決して言葉だけじゃない、そう思ったできごとでした。
だから、
お話しパートナーでも、ほっとラインでも、SNSチャット相談でも、
言葉だけでなく『伝えたいという気持ち』を一緒に感じることができたら嬉しいと思っています。
スクエア・カウンセラー 吃音チーム 工藤彩暖
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東京メンタルヘルス・スクエア 吃音チーム
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「SNSを活用した相談事業について」の講演をしてきました

とある県に、「子ども・若者育成支援」に関する研修会の講師として呼んでいただき、「SNSを活用した相談事業について」というテーマで、約1時間登壇してお話をしてきました。
私たち東京メンタルヘルス・スクエアとしては2018年より始め、また筆者個人としては2016年より通信制高校スクールカウンセラーとして始めた「SNS相談(チャット相談)」について、実際に行ってみてどうであるのかについてお話させていただきました。
研修では、主に下記の内容を取り上げました。
□SNS相談とは何か?
□SNS相談の始まりと広まり
□子どもたちを取り囲むSNS・自殺に関する現状
□SNS相談事業ガイドライン(厚労省)
□SNS相談の特徴(メリット、デメリット)
□SNS相談における対応分類
□SNS相談における緊急対応
□SNS相談のコツ、難しさ
□SNS相談の事例(ガイドラインの事例集より)
参加された方々(子ども・若者育成支援の 関係者の方々)は、大変興味を持ってお話を聞いていらっしゃいました。
時間の関係もあり、必ずしも全て詳しくお話できませんでしたが、終了後、「もっといろいろと質問したかった」というお声もいただき、関心の高さがうかがわれました。
◆
研修内容についてはここで詳しくは ご紹介できませんが、私自身が壇上で話している中であらためて気づいたことを少しご紹介します。
それは「面接相談や電話相談と比較すると、SNS相談には不十分な点がいくつかある。けれども、相談する側の子どもたちにとっては、SNSにはその『不十分さ』を上回るだけの『利便性』があるんだ。だからこそ、これだけ多くの子どもたちがSNS相談を利用している、利便性が不十分さを上回っている」ということです。
実際、カウンセラーがSNS相談では不十分に感じて『電話に切り替えて相談しませんか?』と聞いても、ほとんどの子は『SNS相談がいい』と答えます。
その昔、私自身が私淑した國分康孝に言われた言葉があります。
國分康孝先生は昨年逝去されてしまいましたが、日本において、一つの理論・技法に偏らず、折衷的なカウンセリングを推し進められた第一人者の大先生です。その先生が言った言葉が、「クライアントの役に立つものならなんでも使え!」です。
その言葉、カウンセラーとしての心意気に私はいたく感銘を受け、あれから20年ほど経つ今もしっかりと心に残っている言葉です。
SNS相談については同業のカウンセラーからでさえ、「SNSで相談できるの?」「SNSで相談して、でその後どうするの? SNSだけでは何にもならないでしょ」といった声もあがっています。
私自身はそういう考え、見方もあるのだな、たしかに一面ではそういうところもある、と考えています。そして、是非一度SNS相談の現場の様子を見に来て、SNS相談をライブで感じとって欲しい、とも思っています。
そうしたことを考えつつ、國分康孝先生の心意気に負けないように、私自身も「クライアントの役にたつものならなんでも使え!」の心意気で、子どもたちがSNS相談を利用したいということであればSNS相談を使い、子どもたちの役に立てるカウンセラーでいることができるよう努力し続けていきたいと考えています。
2019年11月25日
特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア
カウンセリングセンター長 新行内 勝善
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NHK「おはよう日本」~SNSカウンセリングの役割といじめ・自殺対策~
私の考えになりますが、SNS相談は匿名性が高く、LINEという馴染の深いツールを活用することで、対面や電話のカウンセリングと比べると非常に利用しやすいサポートだと思います。
少し話は変わりますが埼玉県の越ケ谷小学校では、田畑校長先生を初め、学校の先生方がコンケアという児童生徒の気持ちの波を知るための仕組みを中心に「いじめ、不登校、自殺0」という目標を掲げて、生徒の教育・指導に楽しく、温かく、そして真剣に取り組まれています。
その取り組みを見て思うのは、子どものことを真剣に想う大人がどれだけ多く関われるかが大切ではないか、ということです。
2019年9月8日
特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア
カウンセラー/ファシリテーター 山本立樹
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フジテレビ「LiveNews iT!」で放送された「いじめに関するSNS相談」の取材内容
2019/8/27 フジテレビ「LiveNews iT!」より、いじめに関するSNS相談のカメラ取材を受け、放映されました。
取材を受けたのはフジテレビさんからでした。「LiveNews iT!」という夕方の報道情報番組です。
番組前日の26日にyoutubeで公開された「いじめにNO!」の動画に関する約3分間の報道の中でした。その動画は、夏休みが明ける子どもたちに向け、元メジャーリーガーの松井秀喜さんなど、世界的なアスリートらがコメントを寄せたもので、大きな話題を呼んでいるものだそうです。
その中で当社の様子やインタビューが放映されたのは中程とラストの2回、計1分弱のものでした。
放映の様子は、下記のフジテレビさんのHPにアップされていますので、よろしければご覧ください。
https://sp.fnn.jp/posts/00423059CX/201908271854_CX_CX
番組の様子は、上記ページなどで見ていただければと思いますが、以下、当日の番組では放映しきれなかった部分を中心に、インタビュー内容を抜粋してお伝えします。
<かなり早くからスタートした、当社のSNS相談>
フジTV:いつからSNS相談をやっているのですか?
NPO東京メンタルヘルス・スクエア カウンセリングセンター長 新行内(以下、新行内と略):当団体が本格的に始めたのは2018年3月からです。
ですが、SNS相談、チャット相談について東京メンタルヘルスが初めて行ったのは、2016年の秋からです。通信制の高校でSlackというチャットシステムを使ってスタートしました。
<SNS相談が多い理由は?>
フジTV:電話相談よりもSNS相談の方が多いということですが、どうしてなのでしょうか?
新行内:もちろんLINEがほぼ9割以上、中学生以上には普及しているということもあります。いまの子どもたちは、親しい人とLINE通話をすることはあっても、携帯電話や固定電話はめったに使いません。圧倒的にコミニュケーションにかける時間はSNSの方が多くなります。
そして、これだけSNS相談が多いというのは、「ながら相談」ができる、ということがひとつには大きいと思っています。電車に乗りながら「電話相談」はできませんが、電車に乗りながらSNS相談はできます。家庭のリビングでご飯食べながら電話相談はできませんが、SNS相談であればご飯を食べながらでもできてしまいます。このため、子どもたちにとってはSNSの利便性は高く、当然SNS相談も増えていっています。
<SNS相談に特徴的なこと>
フジTV:面接や電話相談とSNS相談との違いは何ですか?
新行内:もっとも大きな違いは、ノンバーバル(非言語)メッセージに関する情報が少ないということです。
面と向かえば、言葉を交わさなくてもその人の顔色や声色、あるいは服装や雰囲気など、その人のノンバーバルから非常に多くの情報が得られるのですが、一方、SNSではそういったノンバーバルな情報がほとんどありません。このため究極的には、SNSで言っていることが本当のことであるのか? といった裏づけが難しいことがあります。
このため、カウンセラーはそういったSNSの特徴を踏まえ、またSNSに合わせた相談手法も自由に駆使しながらやり取りをしていかなければ、うまく相談を進めていくことができません。
フジTV:となると、カウンセラーの方はやはり若い方が多くなるのですか?
新行内:そんなこともありません。子どもたちから見ると両親・祖父母世代にあたるカウンセラーも多くいます。そしてさらに、カウンセラーのキャリアはそれほど多くはないけれども、SNSなどITに精通した若手のカウンセラーも多くいます。
<SNSならではのイジメがある?!>
フジTV:SNSでのイジメだとどんなものがあるのですか?
新行内:写真をばらまかれた、グループに入れてもらえなかったといったものは、もちろんあります。
ほかに、巧妙だなというか進化しているなと思うのは、LINEのステータスメッセージというものがあるのですが、プロフィールに添える一言メッセージですが、そこを巧妙に使ったイジメというのもありました。容姿に関して、例えば「出っ歯」とか「気取ってんじゃねーよ」とか「何様のつもり」などとステータスメッセージに書いているのですが、誰のことを書いているのか名前は出しません。
そうではあっても、クラスの人など知っている人からみれば、「ああ、あの子のことを言っているのね」などとわかるような内容です。
しかしながら、イジメられた子が、イジメっ子に「ステータスメッセージで嫌なこと言わないで」などと指摘すると、イジメっ子は「は?何のこと? 別にお前のことじゃねーし」などと言って白々しくもごまかします。そこでそれを誰かに見てもらおうとすると、イジメっ子はもうそのステータスメッセージは消してしまっていて、ほかの内容に書き換えてしまっているので、証拠が残りません。
プロフィールのステータスメッセージは誰でもが目に見えるもの、つまり多くの人にさらされてしまうものであり、イジメ被害者にとっては大変屈辱的で許しがたい行為であります。
また、LINEだけではなくTwitterでもあります。Twitterは、ひとりで複数のアカウントを持つことができます。メインで使っている本アカウント(本垢)のほかに、趣味のものである趣味垢、裏の顔である裏垢、あるいは別垢など、さまざまなアカウントを持っています。
例えばTwitterでは、友達に公開している本垢では友好的なことを言っていても、裏垢の方ではひどい侮辱的なことを言ったりすることが少なからずあります。
<SNSの難しさ>
フジTV:言葉だけのやりとりの難しさもありますか?
新行内:あります。ノンバーバル情報で言葉のコミュニケーションを補うことができないため、慢性的な情報不足となります。そして、行きちがい・勘違い・妄想なども加わり、ミスコミュニケーションやトラブルにまでなってしまうことが少なからずあります。
加えて、SNSでは面と向かって言わなくて済む分、直接的な怖さが低減され、普段は言えないようなことまでも言えてしまうという側面もあります。
こうした特徴は、誰にも言えないことが言いやすくなるという側面でもありますので、相談にとっては利点となります。しかし、普段のコミュニケーションにおいては、いつのまにか乱暴な言葉使いとなったり、知らぬ間に相手を大きく傷つけてしまったりすることもありますので、注意が必要です。SNS相談では、そういったトラブル、傷つき体験について話す子どもたちも多くいます。
<SNSでのイジメ被害を防ぐため、親バカと言われても>
フジTV:SNSでのイジメを防ぐため、あるいは早期に発見して対応するためにはどうしたらいいですか? ここまで聞いてくると、SNSでのイジメを防止したり発見したりすることは非常に難しいようにも思えてきたのですが。
新行内:はい、非常に難しいですし、子どもにとっては大変言い出しにくいことです。
SNS相談の中で話を聞いていると、イジメの二次被害といったものがあり、子どもたちが二重に傷ついてしまっていることがあります。それは、イジメられたことを先生に言っても、「あいつがそんなイジメをするわけがない」とか「それは思い過ごしだろ」などと言われたり、親に言っても真に受けてくれなかったり、理解してくれなかったりといったことです。これは子どもにとっては非常につらいことであり、こうした体験を通して子どもたちは人間不信に陥ったり、心を閉ざしていってしまったりします。
ですので、もし我が子がイジメのことを話してくれたら、事の真偽を確かめるその前に、まずは子どもが言っていることをそのまま受け取り、子どもの大事な味方になって欲しいと思います。ほかの誰が何と言おうと、せめて親だけは我が子の大きな味方になっていて欲しいと思います。たとえ親バカと言われても、我が子がイジメ被害を訴えた時には、大いに親バカであってほしいと思います。それは子どもにとっては、非常に大きな力となり、勇気も湧いてくるでしょう。
2019年8月28日
特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア
カウンセリングセンター長 新行内
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